11話「智也との謎」

 思った通りだ。

 智也はいつもこうだ。

 「いいか?もっと将来の夢とかを書け」

 怒る先生の目の前には、智也がすました顔で立っていた。

 先生が怒っているのは、この前短冊に書いた願いごとだった。

 「それが俺の願いごとだからです」

 それを聞いて先生は更に怒る。

 

 僕と翔平はそれを聞いて呆れる。

 「なあ、なんで俺らはあいつの友達なんだ?」

 「さあ?」

 ふと、この前の智也の台詞を思い出す。

 『類は友を呼ぶ』

 僕や翔平は、下ネタを言うような人じゃない。

 類ってなんだろうか。

 

 先生は短冊を智也に見せる。

 「そうじゃない、時と場合を考えろ。この願いは、周りに向かって言うものじゃない」

 「なんで!好きなものを好きと言って何が悪い!」

 「いいか、確かに今はこうゆうことも公言できる時代かもしれない。だけどその反対も居るってことを忘れるな」

 智也は黙っていた。

 「取り敢えず、これはお前の胸に隠しておけ」

 先生は智也に短冊を握らせる。

 「叶うといいな」

 そして、笑いながらその場を去って行った。

 

 智也に懲りた様子はない。

 「類は友を呼ぶ、か」

 翔平は小さくそう言った。

 「確かにな」

 翔平はそう言ったが、僕にはまだ分からなかった。

 

 僕は、そのことを芽依お姉ちゃんに話してみることにした。

 「智也って知ってるでしょ?」

 「智也君?勇気君の友達でしょ?」

 僕は頷く。

 「その子がどうしたの?」

 「智也となんで友達か分からないんだけど。友達なんだ」

 芽依お姉ちゃんは相槌をうちながら話を聞いてくれる。

 「それで、その智也が言ってたんだ。『類は友を呼ぶ』って」

 「類は友を呼ぶ、ねえ」

 「智也は、その、下ネタが好きで、あと、好きなものは好きだって言うんだ」

 芽依お姉ちゃんは考ている。

 「なるほど、似てるところはあるかもね」

 「え?どこ?」

 「なんで私と付き合ってるの?」

 「そ、それは、芽依お姉ちゃんのことが」

 「その歳でこれはなかなか無いよ」

 なんだか恥ずかしくなってくる。

 「まあ、その内分かるんじゃない?」

 芽依お姉ちゃんはそう言って、僕の頭を撫でる。

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