8話「2人の恋を知る人」

 「なんか芽依さあ、最近綺麗になってない?」

 昼休み、目の前にいる真波が私に突然言ってきた。

 黒いショートヘアの彼女は、私の最初の友達だ。

 「え?いや、そんなことないよ」

 「ホントだよ〜」

 「そんなこと言って、ジュースでも奢らせようって言うんでしょ」

 「そんなんじゃないよ」

 彼女は笑う。

 「人ってね、恋をすると綺麗になるんだよ」

 「本当に?」

 真波は頷く。

 「芽依の隣の家。勇気君だっけ?」

 「うん」

 「私の弟の友達でね。よく遊びに来るよ」

 真波は自分のスマートフォンを私に見せる。

 画面には私と勇気が一緒に歩いている写真が。

 この前のデートだ。

 「付き合えたんだ。おめでとう」

 「ありがとう」

 「それで、弟はどう?」

 「終わったよ。昨日帰ったら家で泣いてた。よっぽどだったらしい」

 「そっか…」

 複雑な気持ち。

 私が恋を成就させたのに、その一方で恋を諦めることになるのは。

 「大丈夫。しょうがないさ」

 彼女はチョコを食べながらそう言った。

 「私の弟がそんなやわなわけ無いでしょ」

 大丈夫と真波は自信満々に言った。

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