7話「1つの恋の終わり」

 俺が恋心を抱いてから1ヶ月が経とうとしている。

 勇気は、多分俺が恋をしていることに気付いていない。

 言わなきゃ、伝えなきゃ終わらない。

 この恋は。


 「よう翔平、どうだ、気持ちは。変わりないか?」

 智也が朝、俺に話しかける。

 「何で分かった」

 「分からないと思った?分かりやすい。少女漫画でよく見た」

 「お前少女漫画読むのか」

 「ああ、人の恋は面白いんだよ」

 俺は頬杖をつき、朝日を眺める。

 朝は来る、夜を乗り越えなければ。

 「おはよう」

 勇気がやってくる。

 「ああ、おはよう」

 「おはようさん」

 今日が始まった。


 俺が勇気に告白することは簡単だ。

 だけど、問題がある。

 俺が今、男が好きなことがバレると、何が起きるかわからない。

 多分イジメられる。

 勇気と2人だけにならないと。


 俺は、その時を伺う。

 だがしかし、その時は夕方までやって来なかった。

 綺麗な夕焼けだ。

 「それじゃあな」

 そう言って、智也はそさくさと去っていく。

 「それじゃあ、また明日」

 勇気が去っていく。

 

 ここしかない。

 「待って!」

 「ん?」

 勇気が振り向く。

 ここで、言わなきゃ。

 当たって砕けろだ。

 「ああ、その、あれだ…」

 俺は拳を握る。

 だが、言葉は出ない。

 言わなければいけないのに、この恋を、終わらせなきゃいけないのに。

 俺は、何も言い出せなかった。

 

 そんな時だった。

 「勇気くん!」

 勇気は声のする方を見た。

 それは僕も同じだ。

 「芽依お姉ちゃん!」

 俺は肩の力を抜く。

 2人は駆け寄り、手を繋ぐ。

 勇気は、とても楽しそうだ。

 

 ああ、これでいいんだ。

 勇気のあんな顔は今まで見たことがない。

 無理なんだ、俺なんて。

 男を好きになる奴なんて、おかしな奴なんだ。

 「それで、用は何?」

 「いや、いいんだ」

 俺は優しい声でそう言った。

 勇気は「そっか」と言って、芽依さんと共に帰路へ着いた。

 いいんだ、これで。

 「終わったようだな」

 智也が、何処からか出てきた。

 「ああ」

 涙の混じった声。

 「知ってるか?今日みたいに綺麗な夕焼けだと、次の日は晴れるらしい」

 智也はそう言って去っていった。

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