6話「本当の返事を」
電車に乗ってだいた50分。
アウトレットパークに到着した。
「どこから行こうか?」
「服、見たいかな。とりあえず見て回ろう」
僕と芽依お姉ちゃんは、人混みの中を進む。
僕の視界にフレームのように店舗が流れる。
その中に、僕達はいる。
周りは騒がしい。
その周りの騒がしさをかき消すぐらいに、僕の心は騒がしかった。
「そこから見に行こう」
芽依お姉ちゃんが指差した店に入る。
可愛らしい服が並び、目のやり場に困る。
「これ、どうかな?」
芽依お姉ちゃんは、薄桜のスキッパーシャツを自分に重ねる。
「うん、似合ってる」
僕はそう言った。
「かわいい」と言うべきなんだろうけど、なんだか恥ずかしくて言えなかった。
芽依お姉ちゃんは色々見たが、結局は最初のスキッパーシャツを買った。
その後も、僕達はショッピングを楽しんだ。
あっという間だった。
何度も手を繋ごうとした。
だけど無理だった。
恥ずかしさが、上回った。
気付くと電車に乗っていた。
「今日は楽しかったね」
「うん。また何処か行こう」
「勿論」
そう言って、芽依お姉ちゃんは笑顔を見せた。
忘れていた。
言わなきゃいけないことがあった。
「芽依お姉ちゃん」
「ん?何?」
だけど、ここで言うのは恥ずかしい。
「後で、僕の部屋に来てくれない?」
「うん。分かった」
芽依お姉ちゃんは何か分からないようだった。
「それじゃ、また後で」
そう僕達は交わし、帰宅する。
だけど、5分もしない内に、僕と芽依お姉ちゃんは再会した。
さて、答えなきゃ、先週の返事を。
「それで、用っていうのは?」
拳を握り締める。
「芽依お姉ちゃん」
「ん?」
芽依お姉ちゃんはきょとんとしている。
「僕、その…あの…」
拳を強く握り締める。
「僕、芽依お姉ちゃんのことが好き」
今、僕の顔はどうなっているだろう。
どれだけ赤くなっているだろう。
芽依お姉ちゃんも、顔を赤くしていた。
今日買ったスキッパーシャツよりも遥かに赤い。
「私も、好きだよ」
僕はゆっくりと手を差し出す。
そして、それは芽依お姉ちゃんも同じだった。
手が触れ合い、結ぶ。
僕の心臓の音しか聞こえなかった。
今、僕の顔はどうなっているだろう。
僕は、芽依お姉ちゃんを目線を合わすことが出来なかった。
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