2話「友達と日常」

 芽依お姉ちゃんはいつも通りに窓に梯子をかけ、部屋に戻った。

 窓は2つ、一つは芽依お姉ちゃんの部屋へと、もう一つはベランダに続いている。

 1人では使い切れない部屋を眺める。

 芽依お姉ちゃんの香りがする。

 ほとんど毎日来ているから、匂いも残るか。


 僕はベッドに横になる。


 恋人か。

 何で芽依お姉ちゃんは僕の事を。

 今までそんな素振り無かったのに。

 

 芽依お姉ちゃんは少し前に隣に引っ越してきた。

 そしてどうゆう訳か、僕の部屋の窓の向かい、すぐそこに芽依お姉ちゃんの部屋があった。

 友達が言うには、それは「良い展開」らしい。

 そしてその友達の言う通り、僕と芽依お姉ちゃんは仲良くなった。

 一緒にゲームをしたり、遊んだりする仲になった。

 優しいお姉ちゃんだ。

 

 鳥の鳴き声がする。

 気付いたら朝になっていた。

 朝日が差し込んで来る。

 難しいことはよく分からない。

 

 朝日が教室内に刺す。

 そして窓近くの席に座る僕。

 温かい春の陽気は僕の眠気を誘う。

 「おっはー」

 智也はそう言って、前にある『北坂智也』のシールが貼られた席に座る。

 「おはよう」

 今度は翔平が挨拶し、右隣の『森岡翔平』とある席に座る。

 「おはよう」

 僕はそう返す。


 今日も日常が始まる。

 芽依お姉ちゃんのことは、もうこの2人には相談をして、既に知っている。

 そうでなくても、家に遊びに来たときに、その姿を見た。

 「なあ、あのおっぱい大きい姉ちゃんとはどう?」

 智也が後ろを振り向き、僕に話しかける。

 「え!?ああ、結局付き合う事にしたんだ」

 突然のワードにびっくりしたが、僕はそう答えた。

 実際、胸は、結構ある。

 なんだか、恥ずかしくなってくる。

 「お、顔赤いぞ」

 茶化す智也。

 「そうなのか」

 翔平はそれだけ言った。

 「いいじゃん、俺もあんな巨乳のお姉ちゃん欲しいよ」

 「僕はなんで智也と友達なのか分からない

よ」

 半ば呆れたように言う。

 「好きなのか?芽依さんのこと」

 翔平は少し真剣なようだった。

 「いや、まだそうじゃないんだ」

 それを聞いた翔平の声は、少し明るくなった気がする。


 今日の話題は、結局芽依お姉ちゃんで持ちきりだった。

 僕はずっと智也に振り回されていた。


 僕は十字路で2人に「さよなら」と言い、家に帰る。

 「ただいま」

 僕は部屋の机の上にカバンを置く。

 ふと、窓を見る。

 芽依お姉ちゃんはまだ帰っていない。

 まだ芽依お姉ちゃんが帰ってくる時間ではない。

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