3話「変わりゆく」

 居間に行くと、丁度電話が鳴った。

 お母さんが電話を取る。

 「もしもし、秋原です。あー、ちょっと待ってね」

 お母さんが受話器をこちらに向ける。

 「智也君」

 智也か、多分遊びの誘いだろう。

 「はーい、どうした?」

 「明日、暇か?」

 「明日?」

 言われて気付いたが、明日は土曜日だ。

 「うん、今のところ暇だけど?」

 「よし、パーティーするぞ、10時にうちに来い。昼過ぎるけど、飯とか要らんから」

 「分かった」

 通話を終える。

 「10時から智也の家で遊ぶ事になった。お昼は大丈夫」

 「分かった」

 パーティーか、一体何なんだろうか。


 芽依お姉ちゃんが帰ってくる頃、僕の家では夕飯を食べる。

 そしてその後、直ぐにお風呂に入る。

 ただ、それは向こうも同じなようだ。

 風呂から出て、洗面所の鏡を見る。

 僕の何がいいんだろうか?

 この一見すると女の子にも間違われるこの顔の。

 

 結局僕の部屋に芽依お姉ちゃんがやってくるのは8時くらいになる。

 「やっと休みだー」

 芽依お姉ちゃんは僕の部屋に来るなり横になる。

 僕はそんな芽依お姉ちゃんをまじまじと見つめる。

 「お疲れ様」

 だけど、芽依お姉ちゃんは直ぐに目を逸らした。

 茶色い、少し癖のある髪が、床に広がる。

 そして時折、顔を赤らめながら僕をちらりと見る。

 「どうかしたの?」

 「え、ううん。何でもないよ」

 そこで会話が終わる。


 不思議な空間だった。

 暖かだが、静かな時間。

 だがしかし、この静けさには耐えられる気がする。

 「明日智也の家でパーティーするんだ」

 何とか、話を出す。

 「そうなの?誰かの誕生日?」

 「ううん、よく分かんないし、何も言われてないんだ」

 「うーん、まあ、楽しんでね」

 「うん」

 会話はしたが、その後が続かなかった。


 嫌でも、この静けさになってしまう。

 何か話さなければと思って話題を出しても、それを切り裂くことは出来なかった。

 

 結局その日は、あまり話ができなかった。 

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