4話「レッツ・パーティー」

 10時。

 僕は今、智也の家の前に居た。

 家と言ってもアパートだ。

 「ちょっと待ってろ」

 と、智也から言われ、10分くらい待っている。

 「おまたせちゃん」

 ドアを開け、智也が出迎える。

 そして僕を部屋に連れて行く。

 「よし、入れ!」

 そう言って、扉を開く。


 その空間は、とても智也とは思えない程飾り付けられていた。

 翔平もいる。

 「ほら、入った入った」

 智也が僕の背中を押す。

 「これは?」

 「今日の主役はお前だ」

 翔平が机の上に置かれたコップにジュースを注ぐ。

 鮮やかなリンゴジュースだ。

 「おめでとう」

 「おめでとう!」

 2人が拍手をしてくれる。

 「え?え!?何?」

 2人は笑う。

 「お祝いだ。芽依さんと付き合った」

 翔平はコップにコーラを注ぐ。

 「え、そうなの?」

 「嘘を言って何になるんだよ?」

 「そっか、ありがとう。智也。翔平」

 僕はそう言って、リンゴジュースを口に入れる。

 爽やかな味が、口全体に広がる。

 いつものリンゴジュースと違う感じがする。

 「よく味わえよ」

 「え?」

 突然僕に銃が突きつけられる、なんてことはなかった。

 「お前が今飲んでいるのはこれだ!」

 机の上に、ペットボトルが勢い良く置かれる。

 漫画的な表現だと、机の上のお菓子が飛び上がっていただろう。

 「それは!?」

 「そうこれは、通常のリンゴジュースより100円高い、ウィルチだ!」

 明らかにいつもよりテンションが高い。

 「テンション高いな、智也」

 「主催が楽しまなくてどうする?」

 「まあ、そうだね」

 「よっし、食べるぞ」

 宴は午後3時まで続いた。

 だが、お菓子を口に運び、ゲームなどをして、時間を忘れていた。


 昼は奢ってくれた。

 僕は元からそれほどに食べる訳ではないので、おにぎりを2つ選んだ。

 だが、2人がもっと食えと言うので、しょうがなく、少し高いおにぎりを選んだ。

 

 3時を過ぎると、翔平がサッカーをしようと言ったが、「人数が割れない」、「腹いっぱいで動けない」といった意見が約1名から出たので、結局は無しになった。

 

 結局このパーティーは、お菓子を平らげ、切が良いというところでお開きになった。

 

 「今日はありがとう」

 「楽しんでもらえたようで何よりだ」

 「それじゃあ、また学校で」

 「それじゃあな」

 「またな」

 僕は2人と挨拶をし、帰路へついた。


 勇気の姿が遠くなる。

 「どうだ?決別出来たか?」

 智也はそう問いかける。

 が、翔平は何も言わなかった。

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