20話「夏祭り」
屋台が並び、食欲をそそる匂いの中、私達3人は居た。
「あれ食べたい!」
「ひと通り見てからな」
「えー」
「そう言って、手当たり次第に食べると、後で食いたいものが入らなくなるぞ」
「はーい」
今日最初の花火が打ち上がる。
周りから歓声が湧く。
「ほら芽依、花火上がったよ」
「え!?本当だ!」
芽依は消えていく花火を眺める。
「ほら、行くよ」
私はそう言って芽依の手を引く。
「手離すとはぐれるぞ」
その後も、屋台を見ていく。
その間にも、花火はいくつか打ち上がる。
「正義さん」
「ん?」
私は横を向き、はっとする。
今まで手にあった感触。
それが今は無い。
「芽依?芽依!?」
私は周りを見渡す。
だが人しかなく、この中から芽依を探すのは困難だろう。
「いつ気付いた?」
「本当に、今さっきです」
「ああ…。彩香は向こう、私はこっちを探す。大体探したら入ってきた入り口で集合だ」
「分かったわ」
私達は二手に別れ、芽依を探すことにした。
人を掻き分け、名前を呼ぶ。
何回か花火の音にかき消されるが、聞こえる範囲にいるのだろうか。
泣いているだろう。
怖がっているだろ。
何とかして見つけなければ。
私の中に、久しぶりに焦りが出る。
無事で居てくれ。
そうして入り口付近に戻る。
駄目だった。
彩香がいた。
「見つかったか?」
「いえ、居ませんでした」
「もう一度だ」
私達は、もう一度探す。
丁寧に、丁寧に、とても丁寧に。
花火の音など聞こえない。
だが駄目だ。
見つからない。
私は途方に暮れる。
そんな時放送が入る。
「迷子のお知らせです。千葉県我孫子市から伺いの、春山様、春山様。お子さんがお待ちです。至急本部テントまでお願いします」
良かった。
私の心に晴れ間が来た。
本部テントに行く。
そこには、泣いている芽依と彩香がいた。
「芽依、ごめんな」
「私は芽依を抱きしめる」
芽依はしばらくそこで泣いていた。
花火の音が鳴り響く。
その場にいた全員が空を見上げる。
スターマインだった。
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