19話「日常」

 テレビのCMでは子供が楽しそうにひな壇を見ているが、実際はそうでもなかった。

 3月3日も別にこれとなく過ぎ、3月も終わろうかとしていた。


 これが日常だ。

 芽依にとっても私達にとっても、当たり前に過ぎていく。

 芽依は楽しそうで何よりだ。

 毎日が新鮮なのだろう。

 春休みもあるが、私は会社だ。

 春休みが終わると、クラス替えだろうか。

 うちの上司も変わってくれないだろうか。

 

 そんなこんなで芽依がうちに来てから半年が経った。

 それは逆に美菜から芽依が去って半年になるという事だ。

 それなのに、目の前にいる美菜の顔色は変わらず悪い。

 「相変わらずの会社か」

 「そう、ゴールデンウィークだって休みは今日明日だけ」

 私達は今実家にいる。

 そしてカレーを食べている。

 「5月は?」

 「無いわ」

 私は唖然とした。

 もうこれは労基に相談したほうがいいのではないだろうか。

 ちなみに美菜の職種は事務だ。

 ただ、話を聞く限り、前よりかは幾分気が楽になったそうだ。

 時間は全てを癒やしてくれる訳ではないが、時間がなければどんな傷も癒えない。

 芽依は美菜と十分に話せるようになっていた。

 

 芽依の誕生日が来た。

 ショートケーキを分け合い、食べる。

 「おいしい」

 そう言いながら、頬張る芽依。

 とても嬉しそうだった。

 

 そんな日も、あっという間に過ぎた。

 いろんな日が、あっという間に過ぎた。

 どれもこれもドラマのように派手ではない。

 だがそこに幸せがあった気がする。

 

 これが日常なのだろう。

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