18話「バレンタイン」

 こちらも同じく、鰻屋の手法をとったものだ。

 今日は2月11日、土曜日。

 バレンタインまで後3日といったところだ。

 昼を食べている時に芽依が言った。

 「チョコ作りたい」

 「バレンタイン?好きな人でもいるの?」

 「ううん」

 芽依は首を降る。

 「友チョコ」

 「友チョコ?」

 聞いたことがある、確かテレビでやっていたはず。

 女子高生達が友達同士でチョコを相互に贈るやつだ。

 「良いよ、買い行こう。誰にあげるの?」

 「まなみちゃん。約束したんだ」

 これ、もし大人数に贈ることになったら凄いことになるんじゃないか?


 そしてその午後、私達は材料を買った。

 「何作るんだ?」

 「それはお楽しみに」

 彩香はそう言っていたが、ホワイトチョコにドライフルーツを買っていたので予想はつく。


 芽依は買ってきてすぐに作りたかったようだが、それは後日にされた。


 そして13日。

 家に帰ると、チョコの匂いが微かにしていた。

 芽依は楽しそうに、チョコの上にドライフルーツを置いていた。

 様々な調理器具が並ぶ。

 プラスチックのへらなんてうちにあったか?。

 キッチンは彩香に任せきりだからな。

 「どう?上手くいってる?」

 「勿論」

 彩香は自信ありげに答えた

 「流石」

  手伝ってみるか。

 「手伝うことは?」

 「ない」

 芽依にきっぱりと言われてしまった。

 そう言われては仕方ない。

 私は大人しく、テレビを見ていた。


 次の日。

 帰宅すると、芽依が電話をしていた。

 高校の美菜を思い出す。

 と思うと、通話は終わったようだ。


 芽依は嬉しそうだった。

 「まなみちゃん美味しかったって!」

 「それは良かったな」

 いい笑顔をしていた。

 

 食後、私にもチョコが提供されたが、美味しいものだった。


 芽依が寝た後だった。

 「正義さん。これ」

 彩香がチョコを差し出してきた。

 「これは?」

 「あまりものですけど。どうぞ」

 彩香はそう言ったが、クオリティは高かった。

 「ありがとう」

 私はそれを口に入れる。

 「美味しい」

 「ありがとうございます。お返し、楽しみにしてますね」

 「分かってる」

 私は3倍返しというのが嫌いだ。

 人の気持ちを金額にするのは難しいからだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る