22話「芽依と僕・6」

 僕の腕は、自然と芽依お姉ちゃんの背中へと動いた。

 「大丈夫だよ」

 僕はただ、そう答えた。

 「何が、何でそう言えるの?」

 それを答えるのに、時間は要らなかった。

 「この家にいるのは誰?ここに居て、芽依お姉ちゃんと抱き合っているのは誰?」

 僕は続けて言う。

 「大丈夫。僕達がいる。芽依お姉ちゃんを一番大切に思っている人達がいる」

 芽依お姉ちゃんは僕の肩に手を置き、顔を見せる。

 ひどい顔だ。

 泣いていて、ぐしゃぐしゃで。

 今すぐ笑顔にしたい顔だ。

 芽依お姉ちゃんは、僕の胸に顔をうずくめる。

 そして更に泣いた。

 「芽依お姉ちゃんが、大人になりたくないって言うのは、正直僕には分からない」

 僕は芽依お姉ちゃんの頭をなでながら言う。

 「だけど、僕は大人になりたい」

 きっぱりと言った。

 「僕は、芽依お姉ちゃんと」

 芽依お姉ちゃんを離し、顔を見る。

 あの時は直視できなかった顔も、今ではこうして見ることができる。

 「芽依と、大人になりたいんだ」

 僕は芽依の涙を拭く。

 どうやら収まったようだ。

 

 芽依は直ぐに元気になった。

 正直言うと、僕があのときどうしてあんな感じになっていたのかは分からない。

 

 この先、僕と芽依はどうなるかは分からない。

 また、こんな事が起きるかもしれない。

 その時はまた乗り越えればいい。

 彼女は1人じゃない。

 僕の日常が多くの人に支えられているのと同じ様に、彼女の日常も、多くの人に支えられている。

 

 そして、1日でも多く一緒に居られることが。

 日常を共にすることが。

 非日常を分かち合うことが。

 それが幸せなのだろう。

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芽依ちゃんの日常と非日常 35ki @35ki

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