13話「新年・2」

 新年のお笑い特番を見ながら、ゆっくりとこたつに入る。

 「お腹すいた」

 芽依がそう言った時間は12時半。

 私も腹が減った。

 「そろそろお昼にしましょうかね。餅と雑煮どっちがいいかい?」

 「両方餅じゃんそれ」

 「まあ、そうだけども」

 「そんなら餅で」

 「私もお餅でいいですよ」

 私と芽依は雑煮を食べることにした。

 

 そうして食後、ゆっくりとしている時だった。

 「はーい、あけおめー」

 美菜がそう言いながら戸を開ける。

 一瞬にして場が固まった。

 「おお、美菜か」

 「はあい、あけましておめでとう」

 「う、うん」

 「どうした、座らないんか?」

 美菜はそう言われて座る。

 芽依は彼女を見て、怯えているようだった。

 

 テレビの音だけがする中、父が口を開く。

 「なんだお前ら、まだ何かあるんか?」

 「い、いや」

 「無いんだろ、んじゃいいだろ。それは終わった事だ」

 父はみかんを口の中に入れる。

 「この歳であまり説教くさいことは言いたくないけど、そうゆう事よ。あんまり深く考えることはない」

 父はそう言ったが、昼飯を終えるまでにこの場の雰囲気が和む事はなかった。


 まず言葉を発したのは美菜だった。

 「芽依の様子はどう?元気でやってる?」

 少し緊張したように、途切れ途切れに話す。

 「あ、ああ。今はあれだけど、家じゃ元気だ」

 「そう、それなら良かった」

 「美菜さんの方はお変わりありませんか?」

 「無いわね。悪い意味でも」

 「なんだよ、そんな会社辞表届けでも叩き出してくれば」

 「そんなの無理よ。あの会社がそんなの許可するわけない。それに今どき転職先なんて無いわ」

 「ここで農業手伝うってのも良いと思うけどもね」

 父と母はここで米を育てている農家だ。

 「嫌よ、こんな何にもないところ」

 「まあ、そう言わないでくれよ。これでも生まれ育った土地だ」

 「若い人は殆ど出て行っちゃったからね。しょうがないけど」

 その後も話をしていたが、芽依は口を開かなかった。

 強いトラウマがあるようだ。


 口を開かない芽依に、美菜は話しかける。

 「どう、学校楽しい?」

 芽依は「うん」と一言、小さく頷く。

 「それは良かった」

 そう言いながら頭を撫でる。

 芽依は怯えていたが、撫でられると少し安心したように見えた。

 

 だが2人の会話はそれっきりだった。

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