19話「芽依と僕・3」

 一日経って、いつも通り僕の部屋に芽依お姉ちゃんが来る。

 「勇気君、私決めた」

 過部屋に入るやいなや開口一番に言う芽依お姉ちゃんに対し、僕は突然のことで驚いていた。

 「な、何が!?」

 「私の過去。何で、ママは私を捨てたのか。そもそも、パパとママは何で離婚したのか。それを解明するの」

 まあ、芽依お姉ちゃんがやりたいと言うのなら、僕は止めはしない。

 「良いよ。何で、そのことを僕に?」

 芽依お姉ちゃんは目線をそらして言った。

 「知ってほしい、から」

 芽依お姉ちゃんは続けた。

 「知りたい。勇気君と。後、耐えれなくなったときのために」

 僕は彼女の考えに乗った。

 

 「それで、どうやるの?」

 「簡単。問い詰める」

 「美菜のところに行くのか?」

 僕の部屋の向こう。

 窓の先。

 そこには芽依お姉ちゃんのお父さんがいた。

 「お父さん!?」

 春山さん窓から下を見て言う。

 「ノックしても返事がないから、何だと思ったら。怪我したら困るから、危ないことはやめてくれよ」

 春山さんは、眼鏡の位置を調整し、窓枠に手を置く。

 「勇気君、2人にしてくれないか?」

 「大丈夫お父さん。これから分かることは、話すつもりだから」

 僕は部屋を出るつもりだった。

 が、芽依お姉ちゃんはそう言う。

 「そうか」

 春山さんの雰囲気は変わらない。

 どれだけ厳しくあろうとしても、優しさがどこかにある。

 「私に分かる事は話しておこう。芽依の生みの親、美菜と、あの男は昔離婚した。理由は私にも分からない。シングルマザーとなった。だが、子育てが上手くいかなかった。芽依に虐待を繰り返し。本人の要望で家に来た。ここまでは過去だ」

 僕達は、黙って聞いていた。

 「問題は今だ。離婚していたあの男と美菜が再婚した。今さっきの会話だ。正直言って、私にも殆ど分からない。もしだ」

 春山さんはそう言って紙を出す。

 「もし美菜に会いたいならここが住所だ。だが気を付けて行ってくれ」

 春山さんはもう一つ、靴を取り出す。

 「家は玄関から出入りするんだぞ」

 春山さんはそう言って、芽依お姉ちゃんの部屋を出た。

 

 はっきり言って、過去について分かったことはほとんど無かった。

 収穫は一つだけ、芽依お姉ちゃんの生みの親の家の住所。

 「芽依お姉ちゃん、どうするの?」

 「行く。知りたいの」

 芽依お姉ちゃんは、迷わずにそう答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る