7話「日常の始まり」

 月曜日。

 

 芽依は今日から新しい学校だ。

 だが1つ、心に残っているものがある。

 前の学校に行く芽依は、何やら暗そうだった。

 友人との別れなら良いのだが。

 しかし、何かトラウマを抱え、新しい学校の障害となるのは避けたい。

 

 そんな思いのまま、仕事へ出かける。

 芽依はそれまでとは違い、比較的明るく私を見送ってくれた。

 「いってらっしゃい」

 その声を聞いた私は少し安堵した。

 

 昼休み。

 俊が私の元へと来る。

 「どうだ?一緒に食わねえか?」

 手には弁当箱。

 「ああ、いいよ」

 私達は休憩室に移動する。


 四角い弁当箱を開ける。

 中身はいつも通りだった。

 「なあ、どっか出掛けたりとかしたか?」

 「ああ、色々必要なものを買いに」

 「気をつけろ、女は金がかかる」

 「そうかもな。それと、買い物に時間をかける」

 「それも言えてる。でもまあ、女子供には金をかけるべきだ」

 「時間をかけるのは?」

 「諦めろ」

 私達はそんな感じで昼食を食べた。

 

 仕事を終え、自宅に帰る。

 

 玄関に入り、「ただいま」と言うと、2つの「おかえり」という声が聞こえた。

 「どうだった?新しい学校は?」

 「まなみっていう子がね。優しくてね。仲良くできそうだよ」

 「それなら良かった」

 どうやら要らない心配だったようだ。

 私は一安心した。

 「給食が前より美味しいんですって」

 「そうなのか?」

 「うん」

 そしてまだ、芽依の方から話しかけてはこないが、私達は十分に会話をすることが出来た。

 

 そして次の日。

 

 芽依は自分から学校のことを話してくれた。

 その時私は、日常が始まったと思うことが出来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る