5話「ショッピング」

 その週の土曜日。つまりは次の日だ。

 

 私は車のハンドルを握っている。

 彩香は隣に居る。

 芽依はというと、ショッピングセンターに行くと既に伝えてあるのに、あまり嬉しそうではない。

 美菜にはほしいものを買ってもらえなかったのだろうか。

 荷物の中にも、それらしきものはあまりなかった。

 私は試しに聞いてみることにした。

 「芽依、何か欲しいものある?」

 バックミラーで芽依の様子を見る。

 芽依は驚いたようだ。

 そして小声で言った。

 「ぬいぐるみ」

 小さな声だったが、聞くことは出来た。

 「ぬいぐるみか、良いよ。見に行こう。ちょっと後で」

 その後の芽依は窓の外を見ながら、少し目を輝かせていた。

 そうして数分後、ショッピングセンターに着いた。

 芽依に何か買ってあげるのは良いが、先に必要な物を買わなければいけない。

 私達は車を降りる。

 芽依は店の外観に興味を示しながら店内に入った。

 

 私達はまず、スーパーマーケットに入る。

 そしてあらかたの食材を買う。

 その途中の芽依は、私達の後ろに居ながら、まだかまだかと心待ちにしているようだが、周りに怯えているようにも見える。

 

 ところで、私と彩香はあまり駄菓子類は食べない。

 しかし、芽依はおそらく食べたいだろうから、駄菓子のコーナーに寄った。

 

 今でこそあまり食べないが、私も子供の頃はよく食べたものだ。

 駄菓子コーナーでその時からある子供向けの駄菓子を見ると、ふと子供の頃を思い出した。

 あまり覚えてはいないが、バブルが崩壊したくらいだろうか。

 私はよく10円で買える駄菓子をよく食べていた。

 棒状のお菓子を手に取る。

 なつかしい。

 まだ売っていたのか。

 私はそれをかごに入れる。

 そこにピンク色のパッケージのお菓子も入る。

 持ってきたのは彩香。

 どうやら、同じ感情らしい。

 

 ふと芽依の方を向く。

 芽依は感情に浸っている私達をぼんやりと眺めていた。

 私達は苦笑いをした。

 

 精算をし、スーパーマーケットから出る。

 

 私達は1度買い物袋を置きに車へ戻ろうとする。

 芽依はその途中、しょんぼりしていた。


  さて、芽依にとってはお楽しみのぬいぐるみだ。

 玩具が見えると、芽依は明るい表情になった。

 芽依はいきなり走り出したが、私は言う。

 「周りに迷惑だから走るなよ」

 芽依は、急ぎ足で玩具屋に向かった。

 走ってはいない。

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