9-3 解決編【大将! 幽霊一人、雇って下さい!】
「ハイどうも〜! いだきますっ! 『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ二号です!」
「三号です」
「………」
「………」
「やっぱりカメラの調子が悪いね〜前回に引き続き、連続で映像が乱れちゃってゴメンナサイ!!」
「三号が持っていた一号さんのカメラ、ほとんどなにも映りませんでしたし」
「最後だけ、ちょっと映してくれたよね〜」
「コメント欄でも触れられていましたが、あれってまたドッキリだったんですか?」
「ドッキリではありません!!! 何かが見えたらラッキーだし、見えなくてもラッキー! なんなら、今こうしてリアルタイム視聴してくれているアナタとの出会いもラッキー!! 信じるか信じないかは……アナタ次第!!」
「煙に巻かないで下さい」
「あいたっ……拳はやめて!? ……正直、僕にも良く分からないんだよね」
「………」
「………」
「三号くんが持っていた一号のカメラにしか、黒い影は映っていませんでした!」
「その映像を見てビビった二号さんが新しいカメラを落としたから、あんなところで切れたんですね」
「そういうことだね〜」
「やっぱり二号さん、動画に向いていませんって。家で編集作業してる方が良いですよ」
「そんなことは百も承知だよ!? だけどね、人には誰でもやらねばいけない時っていうのがあるんだって!」
「大変ですね」
「キミもだよ!?」
「三号は、まだ大丈夫です」
「本当かな〜? じゃあ、解決編なので解説をどうぞ!」
「二号さんは全然分かりませんでしたか?」
「ノックの音は、後から冷静に考えたら分かったかも」
「教えて下さい」
「あのラーメン屋さん、裏口が車通りの多い道路に面していたでしょ? そして、結構砂利道だったから……車が通るときに跳ね上げた石がドアに当たって、ノックみたいに聞こえたんじゃないかな?」
「……すごいですね、正解です」
「本当!?」
「まぁ、誰にでも分かることですよね」
「誰にでもってことはないんじゃない!?」
「ノックの前に一瞬室内が明るくなるのは、車のヘッドライトだったというわけです」
「久々に無視された……!!」
「分かってみれば、ただの環境音なんですけど。恐怖が先に立つと、どうしても人間って悪い方向にばかり辻褄を合わせてしまいますよね」
「耳が痛いね〜僕らもそうだよ〜」
「一緒にしないで下さい」
「………」
「………」
「それで、ノックの音は解決したわけだけど?」
「にぎやかな部屋の原因は、動画でもお見せした血のついた畳ですね。あそこに元店員さんで強盗事件の被害者だった方の記憶がこびりついていて、無意識に生前の記録が再生されていたというわけです」
「でもさ、今までは別に普通だったらしいじゃん? なんで今になって?」
「詳しい事情はプライバシー保護の面からあんまり教えることは出来ないんですけど、最近、あの辺りで霊の動きが活発になるような出来事があったんです。加えて、ラーメン屋の立地は霊脈に一致していました」
「ほぅ……! 霊脈っていうのは、霊が集まりやすい道筋ってことだね!」
「元店員さんの霊は、悪質なものではありませんでした。むしろ穏やかというか。放っておいたら勝手に消えていたでしょう。だけど……二号さん、
「前に三号くんが話していた怖いお化けのこと?」
「そうです。
「死んで幽霊になってからも、そうやって勧誘されたり利用されたりするのってイヤだね〜」
「仕方ないですよ。人間の業の深さは、死んだぐらいじゃ断ち切れないんですから。だからこそ、遺された者が故人に絡みついた未練やしがらみを祈りでどうにかしてあげないと。それが供養というものです」
「今回みたいなパターンは、どうすればいいの?」
「どうもしなくていいと思います」
「なんで!?」
「霊脈で悪さをしていた
「まぁ、確かに何か悪さをしているわけじゃないもんね……僕らが勝手に怖がっているだけだし」
「裏口のノックが強盗犯のものかもしれないとか、逃げようともがく元店員さんのものかもしれないとか……そう考えると怖いですよね」
「具体例やめて!?」
「退治するばかりが『除霊』ではないんです。時には共存していかないと」
「『あの世』と『この世』、違う世界に暮らしているのに?」
「違う世界だからこそ、です。言葉の通じない相手にこそ
「………」
「………」
「じゃあ、次回予告にいきましょう! 次回は初心に戻って、普通の事故物件です!」
「事故物件に普通もなにもないと思うんですけど」
「皆にとってのステレオタイプ! ワンルームでの死亡案件です!」
「最近、奇をてらって変なところばかり行ってましたもんね。廃病院とか、ラーメン屋とか……」
「奇をてらったわけじゃないよ!? 皆さんのご依頼にできるだけ応えようとした結果です!! 事故物件に悩まされている不動産屋さんは多いんだよ!」
「土地は有限なのに、事件事故は無尽蔵ですからね」
「そういうこと! 僕たちはこれからも、出来る限りのことをしていきますよ〜? 視聴者さんがいる限り!!」
「応援よろしくお願いします。とりあえず、次の部屋のサブタイトルでも言っておいたらどうですか」
「えっ!? まだ決めてないんだけど……そうだなぁ、次は『凍える部屋』です!」
「人の興味を惹かないタイトルですね」
「いいじゃん!! ここまでついてきてくれた視聴者さんなら見てくれるって!」
「二号さん、それは怠惰というものですよ」
「………」
「………」
「じゃあ、今日はこの辺りで! ごちそうさまでしたっ! 今回の動画について少しでもおもしろいと感じていただけましたら、どうか高評価とチャンネル登録をお願いします!!」
「ごちそうさまです」
「ばいば〜い」
「ばいばい」
「………」
「………」
<コメント:新着順5件表示>
アカウント名:ばん氏
ねぇ、オープニングの音程おかしいって。
ゴーストイーターはいつも何かしら不具合あるな笑
アカウント名:memo dexi
最後に二人が無言でこっちみて笑ってるの、ちょっと怖いんだけど……。
アカウント名:まるめたぴおか
↑わかる。
今回、ところどころ変な間がない??
いつも話のテンポだけはスムーズなのに。
復帰してから何かヘンだな。
急にいなくなるのだけはやめてくれよ。
毎回、楽しみにしているんだから。
アカウント名:フラワーソード
ラゴーって久しぶりに聞いたな。
なんか、コイツら突然いなくなる気がする。
今のうちにスクショ撮っておこうぜ。
アカウント名:R san
good^^
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