3-3 解決編【突然の引退宣言!?!? 】
「ハイどうも〜、いただきますっ! 『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ二号です!」
「三号です……」
「なんかちょっと元気ないね、大丈夫?」
「まぁ……なんとか」
「今日は解決編ですが! その前に前回言っていた言葉について説明してもらってもいいかな? 下にテロップ出しま〜す」
【
「メッチャ難しい漢字だね! しかも見たことも聞いたこともない!」
「まぁ……この名前自体はインド神話の中で伝わる魔族だったり惑星の名前だったり、光を隠すものって意味だったりするんですけど……」
「全くわからない!!!」
「ここでは、そのままの意味です」
「と、言うと?」
「『障害』や『捕まえるもの』です」
「やっぱり良い意味じゃないんだ……」
「そうですね……簡単に言うと、この世に漂う悪い幽霊たちの総称とでも言いましょうか」
「幽霊にも良い・悪いってあるの?」
「自分をわきまえてあの世にとどまるのが良い幽霊で、分別をなくしてこの世に干渉するのが悪い幽霊です」
「どうやって見極めるの?」
「見極め方はありません。見た目は同じですから。生身の人間の身体を乗っ取ろうとする意志のあるものを「らごう」といって、奴らは【羅睺の器】を求めています」
「ハイ! ここにテロップ!」
【
「ここからちょっとぶっ飛んだ話をするので、がんばってついてきて下さい」
「振り落とされないでね!!!!」
「『この世』に幽霊はいませんけど、『あの世』に幽霊はいます。この世とあの世は繋がらないはずなんですけど、三号みたいないわゆる霊感を持った人間や事故物件と呼ばれる歪んだ場所を通して、奴らはやってきます」
「ふ〜ん……じゃあ結局、幽霊っているじゃん」
「話、聞いてましたか? 『この世』にはいないんです。例えばホッキョクグマは北極にはいますけど、日本にはいないでしょう?」
「ん〜〜わかりにくい!! もう一声!!」
「……珍しい動物たちは、普段の生活では関わりがないですが動物園に行けば会えます。 三号たち霊感持ちは動物園のゲートの役割です。ほとんどはゲージに収まっていますが、たまに檻を突き破って出てくる猛獣がいるってことです」
「動物園だったら気軽に行けるじゃん」
「……気軽に行けない人もいるでしょう」
「なんか、例えるの下手だね。三号くん……」
「聞こえてますよ。……それで、生者の身体を乗っ取ってやろうと企む悪い霊たちの総称を【
「幽霊たちにとっては、都合の良い存在だね!」
「器にされた人間にとっては、迷惑な話ですけどね。確実に人生が終わります」
「終わる!?」
「骨の髄まで喰い尽くされて、奪われて、損なわれて、戻ってきません」
「どんな人間が器に選ばれるの?」
「それは……三号にもよくわかりません」
「知らないの!? そんなに自信満々に話しておいて!?」
「三号だって、聞いた話なんですよ。こんなトンデモ話、普通は信じません」
「でもさ、昨日の動画を見てくれた人なら信じてくれるんじゃない?」
「あんなの、ただの風ですよ」
「強いね!? キミは!! 視聴者さんからも言われたけど、度胸あるよね本当」
「度胸とか、そんなんじゃないです」
「そうなの?」
「幽霊との関係において、気持ちが負けた方が飲まれるんです。幽霊を撃退する一番の方法は、『信じないこと』です」
「なるほどね……でも三号くんは見えてるんだし、見えるものを信じないっていうのは無理があるんじゃない?」
「だから、出来る限りの心がけです」
「じゃあ、やせ我慢なんだ」
「なんですか? 普段おちょくられてるからって本番中に仕返しやめて下さい」
「いいがかり!? じゃあこれからも、羅睺に会う可能性はあるってこと?」
「事故物件動画を撮り続けている限り、そうなるでしょうね」
「危ないじゃん。もうやめようよ」
「そうはいきません」
「なんで?」
「一号さんの失踪と、羅睺にはおそらく関係があるからです」
「なんだってー!?!?」
「なので、今後も羅睺とは戦っていきま〜す。いえーい」
「そんなテンションで言うこと? あ、でも前回動画で使ってた魔除け? 身代わり? みたいな手紙があれば大丈夫なんだよね?」
「あれは二回しか使えないので、残り一回です」
「そんなに貴重なもの序盤に使って大丈夫なの!?」
「三号は、切り札をとっておかないタイプなんです」
「誇らしく言わないでよ……心配だなぁ、もう」
「だって、人生は一回死んだら終わりなんですよ? 出し惜しみしている場合じゃありません。『ゴーストイーター』の活動も、一回でも失敗したら終わりだと思ってます」
「重い!!! ……あの手紙って、誰から? 大事なものなんじゃないの?」
「あれは身内からです。大事なものですけど、内容は覚えているので大丈夫です」
「そっか……」
「三号は一度でも依頼に失敗したら、YouTuberを引退するのでよろしくお願いします」
「やめてよ! 僕はどうなるの!!!」
「ウスバカゲロウ四号を探せばいいじゃないですか」
「うう……つめたい」
「ウソウソ、そんなこと思っていません」
「本当……?」
「………」
「そこは即答して欲しかった!!!」
「……ぶっ飛んだ話はこの辺りにして、前回の物件についてお話してください」
「……キミのそういうところ、ちょっとずつ分かってきたよ。……えーっと、前回お伝えした通り、『いつでも死ねる家』の現在の権利者は家主の腹違いの兄の嫁の連れ子の娘の内縁の夫の弟だったんですけど!」
「家主の腹違いの姉の嫁の連れ子の息子の内縁の妻の弟?」
「腹違いの兄の嫁の連れ子の娘の内縁の夫の弟!!! まあとにかく遠縁の親戚だってこと!!」
「実子がいるのに?」
「まあよくある話で、あの家の家主さんの家族は金銭トラブルでボロボロだったみたいだね。で、腹違いの兄の嫁の連れ子の娘の内縁の夫の弟……長いから永井さんとします! 永井さんはね、生前贈与を受けていたんです」
「税金対策?」
「お金の関係で別宅を本宅にしなければいけなくなったとき、家主さんが頼れるのは遠縁の永井さんだけだったと」
「かなしいですね。まあ一人でも、頼れる人がいて良かったじゃないですか」
「永井さん、当時五歳でした」
「………」
「子供に頼るしかない大人って、惨めなもんだよ」
「じゃあ、なんでそこを事故物件にしてしまったんですか?」
「家主さんは多少霊感があったみたいでね、崖の下の方々……三号くんの言葉を借りると、らこう?」
「ラゴウです」
「そうそう。羅睺たちに器としてねらわれていたんだけど、引きずられて死んだら器として利用されるし、生前贈与したからといってまだ5歳だし、おそらく身内たちが贈与した土地をとりあげてしまうって思ったんじゃないかな。だから、自ら命を絶っていわく付きの物件にすることで守ろうとしたんだと思う
よ」
「入り口付近のトイレで首を吊っていたのは、家から引きずり出される直前でギリギリの選択だったってことですね」
「そういうことだね。永井さん! 取材協力ありがとうございました!!!」
「ありがとうございます。あの事故物件ですけど、家主の心残りは永井さんだけなので、晴れた日の昼間にあの家で永井さんがお茶でも飲めば怪現象は収まると思いますよ」
「でもまあ、危ない土地だっていうのは変わらないんで……取り壊しをオススメするけどね〜」
「そこは権利者の方にお任せします」
「ハイ! ということで〜?」
「今回はこれで終わりですね。お見苦しい姿をお見せして申し訳ありませんでした」
「でもね! 僕たちは消えた一号を探し続けますよ〜? なので、これからも羅睺とは戦っていきます! ねっ、三号くん!」
「……イザという時は二号さんにも動画に出てもらいますよ」
「そんな日はきっと来ないと信じてる!!! じゃ、次回予告いきます!!」
「どうぞ」
「次回は『グローバルな部屋』です!!」
「……ハぁ?」
「うわ、年下の子のマジトーンの声きっつい……」
「いや、だってネーミングセンス死にすぎでしょ」
「『国際的な部屋』とか『世界規模の部屋』の方がよかった?」
「……どんな部屋なんですか?」
「これは数年前に強盗殺人事件のあった立派な事故物件です!! でも立地と家賃の安さもあって、外国人の方ばかり入居されていたんですけど……まあ皆ことごとく出て行く!!! 出て行った後の部屋にはいつも、謎のメモが残されているということです」
「謎のメモ?」
「言語はそれぞれ違うんだけどね、内容は同じみたい」
「どんな内容なんですか?」
「それはまだ秘密! 待て次回!!」
「……浅葱さんも知らないんじゃないですか?」
「フフフ……? 今回の動画について、少しでも面白いなと思っていただけましたら高評価とチャンネル登録をお願いします!!それでは、ごちそうさまでしたっ!」
「ごちそうさまです」
「ばいは〜い」
<コメント:新着順5件表示>
アカウント名:む む
ラゴウ、わかったようなわからんような……
とりあえず、捕まったら死ぬ的な扱いでオッケー?
ラゴウ探してるなら、心霊スポットとかに行けば悪い霊?ってのたくさんいるんじゃないの?
なんで事故物件にこだわる??
アカウント名:きくまジョージ
事故物件になった理由がすごいなーって思ったけど、ただの金銭トラブルじゃん。
物件どうしたんだろ……。
アカウント名:Y
CGでもホンモノでもどっちでもいいから、もっと幽霊と戦ってるところがみたい!
あと三号くんは長い台詞の時はマスク外して下さい。聞き取りにくいかも。
アカウント名:い
次の部屋も楽しみにしています!!
グローバル……どんなんか分からないけどw
アカウント名:三月三日子
ラゴウって……普通に打っても出てこない。
なんとなくだけど、そろそろ止めた方がいいと思う。
二号さんの目の下のクマ、酷いよ。
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