3-2 後編【羅睺?? 三号くん危機一髪!!】





「ハイ……どうも。いただきます。『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ三号です。みなさんは、幽霊、信じてますか?」


『唐突だね!?』



「三号は信じていません」



『ウソでしょ!?』


「この世は生きている生命のものです。そしてあの世は死んでしまった生命のものです。二つは関わり合うべきではないのです」


『フムフム』


「あの世に幽霊はいても、この世に幽霊はいません。そういう意味で、三号は幽霊を信じていないのです」


『でも、三号くんには幽霊が見えているのに?』


「三号の目は、たまたま、何かの間違いで二つの世界を重ねて見てしまうのです。そして幽霊たちは、三号みたいな……間違った人間を敏感に察知します」


『背景真っ黒で画質も最悪だけど、どこで撮ってるの?』


「無害な幽霊もいますけど、ある種の幽霊は、あの世とこの世を繋いでしまう間違った人間を通じて、この世に干渉します」


『なんか、難しい話になってきた……?』



「現在、トイレの中で撮影しています」



『自殺現場じゃん!!!』


「さっきまで寝袋に潜り込んで寝ていたんですけど……頭が……痛く、て」


『大丈夫!?』


「どうやら、崖の下の方々に三号の存在がバレてしまったようです」


『それって……どういうこと?』


「三号の身体を借りて、未練を晴らそうとしているんです。でも簡単には貸せません。一度貸したら、最後です。正気には戻れませんから」


『信じるか信じないかは視聴者さん次第だけどね★』


「日本だけでも、年間の行方不明者が何人いるか知っていますか?」


『100人くらい?』


「……行方不明者は、居なくなって騒がれるタイプと何とも思われないタイプに分かれます」


『教えてくれないんだ……』


「後者は、産まれたはいいものの両親もいなければ身寄りも友人もいない人間ですね。急に消えても捜索願すら出されません。野心的な幽霊たちは、そういう人間を選んで、誑かして、自分の器にします。でも大体一回使うと壊れてしまうから……奴らは探しているのです」


『なにを?』



「……何回使っても壊れない……丈夫で都合の良い……生身の【うつわ】を」

 






ドンドンドンッ!!!!!







『うわっ!?!? ドアめっちゃノックされてるって!!!!』


「ただの家鳴りです。自然現象です」


『いやいやいや!? ドアノブもガチャガチャされてるし!!!』


「立て付けが悪いんです。無理に塗り固めたりするから」


『逃げた方がいいんじゃない?』


「三号の目を通してですけど……トイレのドアノブで首を括って亡くなったここの家主の身体を、崖の下の方々が喰らっています。さっき、身体が八割溶けていた理由が分かりましたね……」


『喰らって……?』


「本当は家主を崖下に引きずりこみたかったのに、勝手に死なれて怒っています」


『死んだのに怒られるの?』


「自殺の名所だけあって、理不尽な理由を並べ立てる霊が多いです。家主の身体を手に入れて未練を晴らそうとする輩ばかり。そんなに欲しいんでしょうか、羅睺……」


『らごう? えっ? なに??』


羅睺らごううつわ






バンッ!!!!!







『扉が勝手に開いた!!!』


「っ……すごい風ですね……もう喰らい尽くしたのか……」


『三号くん! 帽子が飛びそう!!!』


「おっと……あぶない。スイマセン、かぶり直しますね」


『人を引きずるぐらい強い風ってある!?』


「安心して下さいよ。カメラだけは……一号さんのカメラだけは絶対に手放しません」


『僕はキミの身の安全の方が心配だよ!! イザという時は捨ててよ!!』


「………」


『三号くん? ポケットに何か入ってるの?』


「……兄ちゃん……」


『紙?』


「……本当は、嫌なんですけど」


『えっ!? 風が強くて聞こえない!!」


「ちょっと舐めてましたね……さすが自殺の名所。数が多すぎる……。このままじゃ、流石にヤバそうなんで……」


『もういいよ! カメラから手を離して!』







「……こんな、所で!!! 負けてたまるかぁあああ!!!!」







『なに!? なに投げたの!? 破った紙切れ!?』


「さっき、投げたのは……ハァ、ハァ……。囮というか、身代わりというか……奴らが求める【羅睺らごううつわ】に限りなく近かった人間の手紙です」


『ラゴウのウツワ?』


「奴らは、羅睺らごうは何回使っても壊れない生身の身体【羅睺らごううつわ】を探しているんです」


『??? ちょっと待って? たぶん視聴者さんも僕もいきなり出てきた謎の単語についてよく分からないと思うから、次の解決編で詳しく説明します!!! 待っててね!』


「匂いにつられて遠くに飛んでいきましたから……当分帰ってこないでしょう」


『手紙、破れて半分になっちゃったね』


「イザという時はこうやって使えって言われていましたから……別にいいんですが」


『あとで僕が探しておいてあげるよ!』


「うるさいのが居なくなったおかげで、ここの家主とも話が出来そうです。身体は喰いつくされていますけど……」


『まさか、首だけ残ってるの……?』


「首だけあれば十分です。ここからはちょっと企業秘密になるので、カメラ止めますね。今回の動画、視聴者さんは信じますか? 信じませんか? 三号にとってはどうでもいいんですけど……どこにでもいる羅睺らごうの餌食にならないためにも、興味本位で心霊スポットなどには行かないことをオススメします」


『じゃあ今日はここまでかな! 次回は解決編です!! 三号君が発した謎の単語の意味とは!? そして家主の真意とは!? 


たぶん情報不足だから僕からひとつ!


僕が元・不動産仲介業の腕を存分に発揮したところ、この事故物件の現在の権利者が分かりました!


ジャン!!!





家主の腹違いの兄の嫁の連れ子の娘の内縁の夫の弟です!!!!






彼とはもうアポ取ってあるので、次回インタビューも紹介します!



それじゃあ次の動画でお会いしましょう!!

ごちそうさまでした!!


ばいば〜い』






<コメント:新着順5件表示>


アカウント名:イ江原そらこ

なんか今日は心霊現象っぽかったですね。

一号さんとの動画を思い出しました。



アカウント名:ろ^ど

三号くんの髪型見えた^^

ちょっと伸びすぎじゃない?

根本がだいぶ黒かったから、金髪は地毛じゃないんだね。

最初見たときは本当に外国人かと思った!


普段冷静だけど急にアツくなるw



アカウント名:黒瀬要

風の音で済ますには無理があるんじゃないの?

でも崖の上だから潮風だと思えば或いは……?


……あんまり深く考えないようにします。

カゼノオトガツヨイナァ。



アカウント名:タピオカ入りレモンティー

らごう? ってなに?

らふらって聞こえなかった?

どんな漢字???


解読班!!!



アカウント名:うさみねこ

ブッタの息子がそんな名前だったって、マンガで読んだ。

あとはしらん。


次の動画まってます。

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