9本目【忘れない】にぎやかなラーメン屋
9-1 前編【初出店!! 居抜き物件にはご用心?】
「ハイ、どうも〜! いただきますっ! 『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ二号ですっ!」
「三号です」
「ねっ! 装いも新たに再出発ということで!」
「三号の帽子がちょっと変わっただけじゃないですか。二号さんのライオンマスクはいつもと同じですし」
「これは量産品だからねっ! 某黄色いお店に売ってるよ〜」
「誰も真似しません。早速動画にいきましょう」
「貸会議室には時間制限があるもんねぇ」
「最近まで三号たちが撮影していた白い部屋、あそこなら時間無制限だったんですけど」
「実は!! あそこは僕の家だったんです!!」
「あんなに視聴者さんから評判悪いところに住んでいたんですか……」
「それがね、住んでみると意外と気にならないんだよね〜」
「住んでる間、痩せ続けた人間が言っていい台詞ではないですよ。骨と皮だけになって消えちゃうのかと思いました」
「うっ……!! ごめんなさい……!!」
「まぁ、いいでしょう。今は二号さん、違うところに住んでいるのでみなさん心配しないで下さい」
「白い部屋は友達に貸してますっ!!」
「友達って?」
「Rからはじまるアノ人!! 一回、このチャンネルともコラボしてもらったよ!」
「あぁ、ラフィですか」
「興味なさそうにするのやめて!? じゃ、動画に行きましょうか! 今回はですね、次回予告通り事故物件ならぬ事故店舗です!」
「ラーメン屋さんですね」
「三号くん、ラーメン好き?」
「適量なら好きです。お店に行くと量が多すぎるので、自分で作ることが多いですね」
「それであんなに袋麺が戸棚に……」
「勝手にのぞかないで下さい。いやらしい」
「じゃあ出しっぱなしにしないでよ!?」
「覚えておきます。本編に行きましょう」
「よし! アナタの家、僕らが過ごした事故物件かもしれませんよ〜?」
「ちゃんと店仕様にして下さい。コピー&ペーストだと思われますよ」
「……アナタの店っ! 僕らが過ごした事故店舗かもしれませんよ〜? コピペとか言わないで!? 台本では毎回ちゃんと打ってます!!」
「では、どうぞ」
「……変なところ細かいんだから」
「お互い様でしょう。食器の使い方なんてどうでもいいのに」
「あれはキミが無頓着過ぎるって!? なんでお茶碗にお味噌汁注いじゃうの!?」
「腹に入ればみな同じです」
「ん〜っ! キリがないから一旦動画!!」
***
「はい、どうも……。物件前からいただきます。ゴーストイーターのウスバカゲロウ三号です」
「二号もいるよ! 道路に面した裏口前にいます! 結構、車通りが多いから気を付けて!」
「ハイ。今回からは二号さんも一緒に行くんですね」
「カメラの調子が悪くてね〜。三号くんに今まで使ってた一号のカメラを持ってもらって、僕が新しいカメラで三号くんを撮影します!」
「ややこしい」
「視聴者さん的にはカメラマンがいた方が見やすくない?」
「どうでしょう。またコメント下さい。今回の物件はですね、地元では有名なラーメン屋さんです。モザイク多めにかけておいて下さい」
「は〜い。もしお店の名前がわかっても、コメント欄では内緒にしといてね!」
「お願いします。ここは、最近になって急に事故物件として有名になったそうです」
「主にスタッフさんからの訴えですね。閉店後、掃除をしていたら誰かが裏口を叩く音がすると」
「僕たちの目の前にあるこの裏口ですね! 裏口を開けても、もちろん誰も居ないんだよね?」
「ハイ。ありがちな話ですけど」
「なんで急にみんな怖がるようになったんだろう?」
「裏口を叩く音プラス、人影が見えるようになったみたいなんです。結構ハッキリ見えるようですね」
「人影?」
「この物件、前に入っていたのもラーメン屋さんだったんです。以前のラーメン屋さんでは強盗事件がありまして」
「……ほぅ!!」
「残念ながら店員さんが亡くなってしまったんです。その後、事故のあった店舗は閉店して、しばらく空き店舗だった期間を経て、再びラーメン屋さんとして再出発となりました」
「よく入ったね〜。僕なら絶対嫌だけど」
「居抜きで入ると初期の設備投資が安くすみますからね。ロンダリング済みのようだったので、店主の方は知らなかったと」
「知らないとかあるの!? 強盗事件だよ!?」
「他人の事件なんて、みんな覚えていないんですよ。二号さんだって、毎日すべてのニュースをチェックしているわけじゃないでしょう?」
「まぁ、そうかも……」
「それと、このラーメン店に現れる人影っていうのが」
「行方不明の一号にそっくりなんだよねっ」
「みたいですね。店員さんが三号たちの視聴者さんでした」
「情報、ありがとうございまーすっ!!」
「今後も情報、お願いします。じゃあ、行きましょうか」
「う……、うん!!」
「……本当に大丈夫ですか? 事故物件、こわいんでしょ? 車で待ってても……」
「いや! 行くよ! 大丈夫! できるできる!! 幽霊なんて全然こわくないし!!」
「それ……完全にビビってる人ですけど」
「1人だと怖いけど、キミと一緒なら大丈夫!」
「そうですか」
「もっと反応してよ!?」
「二号さんはすぐそーゆーこと言うからなぁ……ホラ、開きましたよ」
「いよいよだ……! お邪魔します!!」
「誰も居ませんよ。えっと……裏口からなので、まずは厨房ですね。独特のとんこつ臭。大きな寸胴が三つ並んでいて、お箸とか食器とかが入る棚があって、炊飯器と……麺をこねる台があります。カウンターは5人くらい座れますかね? あとは小上がり形式の座敷があって、そこにテーブルを置いた四人席が6つあります」
「座敷があるなら、そこに布団敷いて寝られるかな?」
「そうですね。今後事故物件じゃなくて事故店舗を請け負った場合、どこで一夜を明かすのかという問題がでてきますが……二号さんはどこでも寝られる人だからいいですよね」
「そんなことないよ!? いつも使ってるマイ毛布持ってきたし!」
「廃病院ではずいぶんぐっすりでしたけど」
「あれは気絶したんだって!!」
「寝るより気絶の方が恥ずかしいと思いませんか?」
「ぐっ……!!」
「今回は良かったですね。もう夜も遅いですし、早速支度して……浅葱さん? なんで離れた場所に毛布敷いているんですか? もっと近くで寝ましょうよ」
「本名やめてよ! 絶妙に混ぜてくるから、最近ツッコむの忘れちゃってるし! 日頃の癖が出てるって!! ……えっと、だってやっぱり、その……キミ……」
「離れた場所にいると、なにかあった時すぐに助けてあげられませんけど」
「ごめんなさい!! 近くに行きます!」
「ハイハイ」
「ぼっ、僕もなにかあったらキミのこと助けてあげるからね!」
「ハイハイ」
「軽い……!!」
「当たり前のことを何度も言わないで下さい。時間の無駄ですよ」
「大人になると、いろんなこと忘れがちだからね〜」
「どんなことを忘れました?」
「え? そりゃあもちろん、辞めちゃった不動産仲介業のことかな〜。最初は楽しかったんだけどね……」
「一号さんとはそこで知り合ったんですよね」
「うん。まぁ、在職中はロクに話もしなかったけどね。ホラ、僕と一号って全然タイプ違うし」
「一号さんがプラスなら二号さんはマイナスって感じですもんね」
「直球すぎない!? まぁいいけどさ。一号はね、不動産の仕事がとっても好きだったんだよ。三号くんも、将来不動産屋さんになりたいんだっけ?」
「はい。人間は生きている限り『家』からは逃れられませんから。安全な場所を教えてあげたいじゃないですか」
「急に壮大な話になったね!? あっ、それじゃあさ……」
バンッ!!
「ヒッ!?!?」
「修学旅行じゃないんですし、さっさと寝ましょう」
「さ、さっき、う、裏口から音が……!!」
「いつものことです。おやすみなさい」
「ええ〜……!!」
「スー……スー……」
「もう寝た……!! 相変わらず寝付きいいよね……! えっと、僕が締めますか。実はさっきから、なんだか胸が痛い気がするんですけど、頑張って寝ます……!! ごちそうさまでしたっ……!」
『二人で動画撮ってるとテロップの出番ないね笑
次回は後編です!
裏口の音はなんだったのか?
一号によく似た人影の正体は!?
あと、僕は無事に寝れたのかな笑
ではまた次回っ!
ばいば〜い!』
<コメント:新着順5件表示>
アカウント名:くもあめ
迷惑かかるから店名は出さないけど、もっとモザイクかけないと分かる人には分かっちゃうよ〜?
店舗を請け負うときは気を付けなさい!!
アカウント名:ミフォリー
二号さん、流石に痩せるの止まった?
マスクで分かんないけど、顔色良くなった気がする!
カメラは二号さんの方が安定してる!!
三号くんの寝顔も撮れてるし笑
アカウント名:糊塗
白い部屋、自宅だったとかマジかよ。
てか、貸された友達は大丈夫なの??
霊感ないオレでもあの部屋は気持ち悪かったのに……。
よく住めるなぁ。
事故物件YouTuberなんかやってると麻痺してくるんかな。
ラーメン屋の続きはよ。
アカウント名:縺?◆縺斐≧
お前ら、やめとけよ〜
アカウント名:R san
good^^
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