2-3 解決編【わるいことはしちゃいけないね】
「ハイどうも〜! いただきますっ! 『ゴーストイーター』です! 僕はウスバカゲロウ二号!」
「三号です」
「今回は解決編ということでね。前回動画、覚えてますか?」
「二号さん。その前にこの有様を説明して下さい」
「ごめんごめん。僕にとっては見慣れた光景になっちゃったからさぁ」
「……浅葱さん」
「うん……今回ばかりは本名で呼ばれても仕方ないね。ごめんなさい!! 僕が悪かったです!!!」
「頭を上げて下さい、二号さん」
「三号くん……ゆるしてくれるの?」
「いいえ? 二号さんの不注意のせいで三号はいま三角巾生活なわけですから」
「ごめんなさい!!!!!! えっと、前回動画の最後で衝撃映像が映ってしまったと思うんですけど……」
「三号の前を歩いてた二号さんの前方不注意で、前から突っ込んできた車と接触しそうになったんです。直前で三号が突き飛ばしたから、二号さんは無傷で三号が負傷したんですけど」
「何故か前方から走ってくる車が見えなくて……三号くんの声で気がついた時には遅かったです……反省してます……」
「土下座やめてくださいって。話が進まないじゃないですか」
「三号くん!」
「あとできっちり、お詫び……していただきますから」
「こわい!? 今までそんなに笑うことってあった!?」
「まあ、大した怪我ではないので視聴者さんも心配しないで下さい。それよりも、事故現場が事故物件の前だったという点に注目してほしいですね」
「ビックリしたよね〜。これで三号くんも二重事故にあったというわけだ」
「二号さんにぶつかろうとした車、ブレーキを踏もうともしなかったですね。そのまま走り去ってしまいました。まるで三号たちのことなんて見えていなかったみたいに」
「ぶつかる寸前にカメラ落としちゃったから、ナンバーも分からないんだよなぁ」
「分からなくてよかったじゃないですか」
「なんで?」
「もしもしっかり記憶していて、そのナンバーがこの世に存在しない車だったりしたら……」
「こわがらせるのやめてよ!?」
「なに言ってるんですか。こわらがせるのがこのチャンネルの目的でしょう」
「いや、別にこわがらせるためにやってるわけじゃないけど……」
「コンビ名にゴーストとかつけてる時点でそうとしか思えません」
「そう言われると困るなぁ。コンビ名は一号が決めたか……」
「もしコンビ名の由来とか聞きたい方いましたら、コメント欄でコメントお願いします」
「台詞かぶせないで!?」
「ほら、進行してください」
「うっ……。じゃあ、ハイ! 続けていきましょう!! 前回、お見せした謎の四角い石なんですけど、あれは境界標って呼ばれるものなんですね」
「土地と土地って地図上で境界線が引かれていても、本当に地面に線が引かれている訳じゃありません。実際には目安として、境界標と呼ばれるものを一定間隔に置くことで境界としているんです」
「これがまぁ〜〜〜〜〜トラブルの元!!!!!」
「そうですね。いっそ目に見える線が引かれていたらいいんですけど」
「普通に暮らすぶんには問題ないんですが、いざ土地を処分したり活用したりしようとすると……やれ、隣の住民が必要以上に自分の土地を侵害しているとか、境界標を動かしているところをみたとか、坪数が変わってくるからあと何センチ違うはずだとか、なんとか……」
「土地家屋調査士って専門家の力を借りることになったりもします」
「最終的にはね。まあ、昔は境界も曖昧だったから、トラブルになる気持ちもわかります。でも、境界って大事なものなんです。この世界で生きていくための大切な、守るべきルールです」
「では、どうしてそのルールがあんな場所に捨てられていたのでしょう?」
「ん〜……取材許可がとれなかったから詳しいことは言えないんですけど。おそらく、最近建った新築のお家があったじゃないですか」
「ハイ」
「あのお家、土地のわりにお家が大きすぎるなって思ってたんです」
「元不動産仲介業のかなしい習性ですね」
「今、こうして役に立ってるからいいじゃん! ……で、その違和感の正体がですね、与えられた土地以上の建物を建ててしまったからなんです」
「……つまり、あのお宅の方は家を建てるにあたって、もともとあった境界標を動かしてしまったんです。面積の広い家を望んでいたんでしょう。動かしたのは数センチでしたけど、その数センチが……」
「過去の交通事故現場だったんですね」
「あのお宅が建つ前は定期的に献花されていたみたいなんですけど、建ってからは所有権を主張されてそういったことを一切拒否していたということです」
「周辺住民からの聞き込みで分かりました! 本人に取材拒否されても、本人以外に取材すればいいだけだもんね!」
「何事もポジティブに」
「取材拒否されちゃったから、教えてあげられなかったけどね」
「遅かれ早かれ、あのお宅には悪いことがおきるでしょう」
「なんとかして教えてあげられないかな〜?」
「無理でしょう。溺れていない人間に浮き輪を渡してもキョトンとされるだけです。もしも依頼が舞い込めば、その時は真摯に対応すればいいと思います」
「僕たちの目的は、事故物件だもんね!」
「そういうことです。幸い、事故物件の家主の方は話の通じる方でしたので、少し離れた場所に新しく献花スペースを設けることができました」
「これで良くなるかな?」
「そうですね。眠りを妨げられたから、死因である交通事故の記憶があの場所で再現されていたので、再び安らかな時間が訪れれば事故もなくなるでしょう。そうしたらうるさくなくなって、事故物件の彼女も自然と消滅できると思います」
「あの事故物件と交通事故って、何か関係があったのかな? たとえば、亡くなった彼女の子供が被害者だったとか」
「いえ、無関係です。ただ、あの部屋に住むことで霊的エネルギーが身体に溜まってしまうので、事故現場の記憶と同調しやすくなってしまったということでしょう」
「幽霊同士にも縁ってあるのかもね」
「そうですね。むしろ、縁しかないと思います」
「ハイ! これにて『二重事故物件』は解決ということですね!」
「またおかしなことがあれば概要欄から『ゴーストイーター』に連絡下さい」
「みなさんも、あと少しだけ土地がほしいな〜と思っても絶対に境界標は動かさないで下さいね! トラブルの元! 心霊現象の元!!」
「どうしても納得いかないのなら、役所に届け出るか土地家屋調査士まで連絡して下さい」
「では、次回予告をしましょうか」
「ハイ。次回は『いつでも死ねる家』です」
「自殺の名所である崖の上に立つ一軒家で亡くなられた方のお家なんです! 外に出ればいつでも死ねるのに、なぜ室内で死を選んだのか?」
「一軒家の事故物件って、ひさしぶりですね」
「そうだね。マンションとかの集合住宅なら一部屋のために全てを壊すことは出来ないけど、一軒家なら潰して分割すればなかったことになるから」
「それなのに、そのお宅は取り壊されずにそのまま売りに出されているんです」
「さぁ! それは何故なのか!!! 調べて参りましょう!」
「今回の動画について、少しでも面白いなと思っていただけましたら高評価とチャンネル登録をお願いします」
「次回もよろしくね! ごちそうさまでしたっ!」
「ばいばい」
「ばいば〜い」
<コメント:新着順5件表示>
アカウント名:ママレオン
怪我してるじゃん!!!
年下にかばってもらう二号さん……w
もっとしっかりして!
アカウント名:【ゴーストイーター】みてね@rumi
三号くん大丈夫!?
二号さんもまた痩せてない???
事故物件動画もいいけど、二人が怪我するなら事故物件以外の動画もみたいな♪
ゲーム実況とかどう?
アカウント名:こっこ
ウスバカゲロウってアリジゴクの幼虫ことだよね?
アリジゴクは英語でアントライオン。
なにかしら関係はあるんだろうけどここまでしかわからん。
解説班!!
アカウント名:〜ま後藤
境界標っていうのか、あれ。
ただの石だと思ってたww
触らんとこ
でも自分が家建てるときには触っちゃうかもw
だってデカい家に住みたいじゃん?
アカウント名:シぁーン
だんだん二人の距離感が分かってきた笑
次回も楽しみにしてます!
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