★-3 解決編【驚愕! 納得! 出られない理由!】




「ハイ、どうも〜! いただきますっ! 『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ二号ですっ!」


「三号です」


「僕と一号の過去動画紹介も今回が大詰め! あの謎の石は一体なんだったんでしょうか!?」


「二号さんがつけた【石御殿の王さま】ってダサブタイトルにもちょっと意味があるので、合わせて見てもらえるといいかもです」


「ダサブタイトル!?」


「ダサいサブタイトルって意味ですけど……すいません、伝わりませんでしたか?」


「めっちゃ伝わってるけれども!! そんな風に思ってたの!?」


「そうです。それじゃ、VTRどうぞ」


「あっ、どうぞ!!」




***




「なんか、平たい石ですね……すべすべ……見たことない文字が……あ〜、これは……うん。分かりました!! これは板石塔婆いたいしとうばです!! っても何のことか分かんないか……えーっと、コレは板碑いたびとも呼ばれていて、簡単に言っちゃうとお墓ってゆーかお位牌ってゆーか……つまり死者を弔う為の供養の一つです! 死んじゃった人が極楽浄土に行けますようにって願いをこめて、石に神様の名前や経文を梵字で彫ったりします!」


『軽々しく持って来ちゃいけないものなんだね』


「見た感じ、この石に刻まれているのは結構身分の高い方だったみたいだな〜。どっかの王様みたいな人です!」


『なんでそんな場所に?』


「だけどな〜……今までの歴史の中で、人間がどれだけ生きて死んだか知ってますか?」


『一億人ぐらい?』


「全員分の完璧な供養なんてね、不可能なんです。弔う人間は減り続けるのに死者は増え続けるんですよ? 無茶じゃないですか」


『やっぱり教えてはくれないんだね……』


「ある程度の期間や心の整理、それに管理ができなくなったら、こういう石って戒名や文字を削って道路や堤防の土台にしたりするんです」


『と、いうことは僕たちは墓石の上を歩いているのか……』


「墓石って、結構土台として優秀なんですよ? まぁそれも輪廻転生って感じで、諸行無常ってゆーか……なんか良い感じだと思いません? 理想はいつまでも保管して供養したいところですけどね〜。土地も人生も有限なんで。理想ばっかり言ってると日本中の山が墓石だらけになっちゃう!!」


『確かにそれは困るね……』


「そこはうまく共存していかないとな〜。ここの住人、石集めが趣味だったことでしたけど……収集の時にどうやらこの石を持ってきちゃったみたいです!」


『うっかりかな?』


「でもね、俺は思うんですよ」


『何を?』


「石集めが趣味の人間ならね、板碑や板石塔婆のこと……本当に知らなかったの? って」


『どういうこと……?』


「これは俺の考えですけど……この部屋の住人、分かってて持ってきたと思うんですよ」


『何のために?』


「捨てられた板石塔婆に、誰にも知られず死んでいく自分と似たシンパシー感じちゃったのかな〜」


『わからなくもないね』




「だーけーどっ!! そういうシンパシーは勘違いですっ!! やめましょう!!」




『身も蓋も無いww』


「育った環境も身分も時代も違うんですよ? なよっちい現代人は、大体過去を生きた人間には精神力で負けます。生きてる人間同士なら話し合いできますけど、死んだ人間とは話し合いなんてできませんっ!!」


『霊感あっても無理なの?』


「俺はちょっとだけ霊感みたいなものがあるんですけど、話すって言うよりも留守電聞いてるって感じかな? 他の人は知らないけどね〜。でも死んだ人間にシンパシー感じるよりも、生きてる人間同士でコミュニケーションとろうぜ!!」 


『今を生きろ!! ってことだね』


「ここの住人と板石塔婆の間には共通して『さみしさ』がありました。それだけなら良かったんだけど、住人の死を受けてエネルギーが暴走した結果!!」


『結果?』




「この部屋自体を、新しいお墓にしちゃいました!」




『えっ?』


「昔の人って、王様が亡くなったとき家臣も一緒に死ぬみたいな習慣があったでしょ?」


『殉死ってやつだね』


「板石塔婆に刻まれた王様もそれを覚えていて、この部屋の住人が亡くなった時にビビッときたんだろうね」


『なるほど』


「お墓だから、入れるけど中から出られないんだな。出る必要がないから。俺は今、新しい殉死者だと思われている! 違う! 違うぞぉおお!!!!」


『近所迷惑だからやめて〜!!』


「こんなもの!!」


『窓から投げるのもダメ!!!』


「……とは、しないですけどね。流石に! しゃーない、しかるべきところに持って行くか! 現実問題として、出られないのは立て付けが異常に悪いからってことだと思うんだけど……」


『他にも理由があるの?』


「たぶん、住人が大量の石をコレクションした為に床板が沈んでしまったんでしょう!!」


『あっ……。とっても現実的だった……』


「ま、事故物件っていうのは、一割のマジ幽霊と九割の人間的不始末が原因で起こるものなんですよ。それを勝手に組み合わせて、勝手に怖がっちゃうんだな!! あはは!! 怖がる気持ちが一番怖い!! 気持ちで負けたら終わりだぞ〜?」


『笑い事にするところが一号らしいよ』


「それじゃ、後は二号に連絡して外から開けてもらいま〜すっ!! ごちそうさまでしたっ! 『ゴーストイーター』でした! ばいば〜い」





***





「ハイ! と、いうわけでした〜! 心理的瑕疵物件かつ物理的瑕疵物件って感じでしたが、いかがでしたか?」


「なんか、三号たちが最初に行った事故物件と似てましたね」


「そうだね。あの時も、お位牌が原因だったし。よくある話なのかな?」


「死んだ後に残るのってやっぱりお墓やお位牌ですからね。そして一番扱いに困るものでもあります」


「ちゃんと生きてる人間同士でコミュニケーションして、うまく折り合いつけていきたいですね!」


「きちんと供養した後なら、砕いて道路にするのも一つの手らしいです」


「放置が一番いけません!! 視聴者のみなさん、ちゃんとお墓の管理してますか〜?」


「もしかしたら、百年後くらいにアナタのご先祖様が事故物件作っちゃうかもしれませんよ?」


「もしくは、供養もされないまま道路や堤防の一部になっちゃうか」


「どちらにせよ悲しいですね。せめて家族くらいは、弔ってあげたいものです」


「さて!! 過去動画なので見苦しいところもあったと思いますが、どうでした? 一号のこと、ちょっと思い出してくれました?」


「なんでこの動画、お蔵入りしちゃったんですか? 普通にまとまってたのに」


「え? あ〜……この動画、最初に編集したもんだからサブタイトル付け忘れて『00』とかにしちゃってて、パソコンの中で紛れちゃってね……」


「やはり、ぽんこつ……」


「ヒドい!! まぁ否定はしないけども!! じゃ、次回の予告に移ろうか! 僕たち『ゴーストイーター』の動画に戻ります!」


「次回は個人からの依頼です。事故物件って言うよりも、事故部屋ですかね?」


「一緒に暮らしていた弟さんが自殺して、その部屋で怪現象が起きるという依頼です!」


「さっきの部屋は出られない部屋でしたけど、次の部屋は入れない部屋なんですよね」


「その通り! 名付けて、【潜入不可能の部屋】! お楽しみに!!」


「だからネーミングのノリが古いんだよなぁ……」


「いいじゃん! 放っておいてよ!!」


「放ってなんておけません! 二号さんは大事な相棒なんですから!!」


「こういう時だけ熱血!?」


「では今日はこの辺りにしましょうか。今回の動画について、少しでも面白いなと思っていただけましたら高評価とチャンネル登録をお願いします」


「切り替えが早いっ! よろしくお願いしますっ!!」


「ごちそうさまです」


「ごちそうさまでしたっ!! ばいば〜い」


「ばいばい」






<コメント:新着順5件表示>


アカウント名:めbang

意外とちゃんとした理由だったな〜。

まぁオレはそうじゃないかと思ってたけどな!!

もちろん!!!


アカウント名:りっきー

見比べると、一号と三号って似てるね。

幽霊に対する考え方とか……物理的な攻撃とかねw


アカウント名:運ばれた鳶鷹

最近ニュースで墓石がそのまま堤防に使われたっていうの見ました。

「戒名が見えるから、堤防近くを歩くときは目線を反らす」ってインタビュー受けてた人が言ってたけど、本当に身近なんですね……。

まさかこの動画で思い出すとは……!


アカウント名:巡

二号さんのポンコツ疑惑w

次回も楽しみにしてます!!

あと、一号さんの他の動画見ようとしたら一号さんの顔だけどんどん黒くなっていくんですけど……どうにかして下さい!!!


アカウント名:R san

good^^

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