4-3 解決編【閲覧注意!勘違いで呪われる!?】
「ハイどうも〜、いただきますっ! 『ゴーストイーター』です! 僕はウスバカゲロウ二号!」
「三号で〜す」
「前回動画ではアップロードミス申し訳ありませんでした! 出演して下さったRさん! コメントもありがとうございます!」
「動画の視聴者さんだったみたいなので、この動画も見てくれていますかね?」
「見てたらコメントくださ〜い。あっ、もちろん他の視聴者さんもコメントどしどしお願いします!! 答えられるコメントは動画で取り上げますので!」
「じゃ、『グローバルな部屋』の解決編といきましょうか」
「三号くんが最後に言っていた後始末ってなんのことだったの?」
「【10/100】って書いたメモを貼っておいたんですよ」
「何のために?」
「あの部屋が事故物件として悪質になったのは、事件後の最初の入居者が間違ってしまったからなんです」
「間違った?」
「アラビア数字って、まあ、国にもよりますけど世界水準でしょ?」
「まあ、確かに……どこに行っても1は1って通じるだろうね」
「日本人的な目線で考えて下さい。三号たちは【10/100】のことを【十/百】って書きますか?」
「ん〜……あんまり書かないかも。百円も100円ってアラビア数字使うことが多いし」
「あの部屋で眠ると、夢を見るんです」
「強盗に襲われて背中を刺される夢だね」
「はい。何度も何度も。腰の上に乗られて、骨が砕けるかと思うほど肩胛骨を捕まれながら一方的な暴力を受け続ける夢です」
「ちょ、ちょっとあんまりリアルに言わないで……」
「息がね、できないんですよ。上からの圧迫で肺が押しつぶされているのと、吐血のせいで気管が塞がれて。でも、心臓だけは生命の危機を感じてバクバクバクバクうるさくて。まるで、全身がひとつの臓器となってそれをぐちゃぐちゃにかき回されているような……」
「やめやめ!! で!!! その夢がどうしたのかなっ?」
「……夢の最中にですね、強烈に【10/100】というイメージが飛び込んでくるんです」
「イメージ?」
「公式な記録には残っていませんけど、襲われている時に被害者の目に飛び込んできた文字らしいですね。それは、犯人のポケットからこぼれ落ちたメモだったのです」
「じゃあ、被害者からのダイイング・メッセージじゃなくて加害者の言葉だったんだ」
「絶命寸前の時に目にした文字だったので、記憶に残ったんでしょう」
「どんな意味だったの?」
「ただのメモですよ。走り書きです。【10時の100番便で田舎に帰る】って意味だったと思いますよ」
「田舎?」
「犯人の動機は金銭目的と聞いています。今回の事件は、田舎に帰るためのお金に困窮して起こしたものでした。結局、そのせいで当分田舎には帰れなくなっちゃったんですけどね」
「ふ〜ん……なんか、かなしいね」
「一番悲しいのは被害者ですよ。……あの部屋に泊まると悪夢を見る、目覚めたときには強烈な【10/100】というイメージがある、そのまま書けばいいものの、最初の住人がアラビア数字じゃなくて自分の国の言葉で書いたんです。たとえば【ten/one hundred】って」
「なるほど」
「被害者は襲撃時の声で犯人が日本人であることを知っていましたから、明らかに日本語じゃないメモを見て新しい住人が犯人ではないと悟るのです。そして怪現象を止める。でもすでに住人は怖がっているから逃げる。新しい住民が興味本位で無罪を証明するメモを剥がす。そしてまた悪夢がはじまる……といったループですね」
「メッチャ理性的じゃん!! そういう賢い幽霊って、ヤバいんじゃないの?」
「……一件目の動画で三号が話したこと、覚えていますか?」
「ごめん……忘れた……」
「バカですねぇ、二号さんは。自分にとって理性的であるなら良いんですよ。自分で学んで消えていきますから。厄介なのは、他人に対して理性的なタイプです。騙して脅して乗っ取ってやろうという考えに転びがちです」
「じゃあ、あの部屋の幽霊はメモの文字で日本人かどうか見分けてたってこと?」
「そういうことです。夢の中のイメージは強烈に【10/100】なんですけど、最初のメモがアラビア数字じゃなくて住人の母国語で書かれてしまったために、みんな手本を見習って奇しくも様々な言語の【10/100】が揃ってしまったということです」
「……それ、もしひねくれてアラビア数字で【10/100】って書いたらどうなるの?」
「犯人認定されて、復讐されるでしょうね」
「復讐って……?」
「平たく言うと、呪い殺すとか」
「怖すぎる!! そんな曖昧な理由で呪っていいの!?!?」
「勘違いとか、幽霊には結構多いんですよ。心霊スポットで無差別に体調が悪くなるのだって、あれは呪う相手を間違えているんです。理想を言えば、自分を殺した相手や未練を残した相手だけに憑けばいいじゃないですか。それをしないのは、分からないからなんですよ」
「そういえば前回のコメントでもあったけど、幽霊になったら犯人くらい自分で分かるのでは? っていう疑問はどう思う?」
「死ぬ前に分からなかったことは、死んでからも分からないです」
「確かに、死んで全てが分かるならみんな死ぬよね」
「その思想はちょっとサイコパスっぽいですけど、大丈夫ですか?」
「なんで!? おかしなキャラ設定つけるのやめてよ!!」
「……と、いうわけで」
「どういうわけなの?」
「三号はあの部屋に正しい【10/100】のメモを残しておきました」
「それじゃ、三号くんが呪われるんじゃないの!?」
「ちゃんと伝えておきましたから」
「なにを?」
「本当は違う世界に干渉しちゃいけないんですけど……」
「うんうん」
「犯人はピーッ刑務所にいるピーッだって」
「ちょっとぉ!! 動画内で実名突撃やめてよ!!!」
「編集でピーッ音を入れてくれるって信じていますから」
「イヤな信頼だなぁ……もう」
「これであの事故物件は静かになると思いますよ。幽霊は犯人のところに行きましたし、【10/100】の正しいメモも残したので、謎の連鎖は止まるのではないでしょうか」
「犯人のところ……?」
「深く考えないで下さい」
「わかった。……もう居なくなったのなら、べつにメモはいらないんじゃない?」
「形式美ですよ。あるべきものがなくなったら、不安になる人も多いでしょう」
「今回の物件、最初の人が間違えたのってファインプレーだったの?」
「そうですね。でも間違えたからこそ、事故物件が長引いてしまったとも言えますが」
「あんまり不動産屋目線で言うのやめてよ」
「すいません、つい。身内びいきなもので」
「ハイ! じゃあこの辺りで今日は失礼しましょう! アルバイトも無事に成功しましたし! 次回予告をどうぞ!!」
「次回はですね、コメント欄でご要望いただけたので一号さんと二号さんの動画の紹介をしましょうか」
「コメントありがとうございます!! 僕と一号で『ゴーストイーター』をやっていた時の動画です!」
「過去動画、いくつか再生しにくくなってるって苦情があるんですけど対応してくれてますか?」
「頑張ってるんですけどね〜。機械は苦手なんだよネ★」
「三十路前男のウインク、マジできっつ……」
「ごめんなさい! 勉強します!! 次回紹介する動画はね、なんと未公開動画です! ハードディスクを整理してたら見つけたのでアップロードします!」
「次は失敗しないで下さいね」
「まかせて安心!」
「不安」
「僕と一号がはじめて撮った動画なんですけど、カメラに不慣れで見切れとか音割れとかが激しすぎてお蔵入りにしてたんだよ」
「そんな動画を? 今、出すんですか?」
「あの頃より僕も編集うまくなってるから! できるだけ綺麗にして出します!!」
「どんな部屋なんですか?」
「タイトルを付けるとしたら『呪い石の部屋』かな」
「ダサい」
「うっ……じゃあ『昔の部屋』!!」
「正気ですか?」
「ん〜……じゃあ投稿するまでに考えます!! 最初の部屋ってことで、結構ゴリゴリの事故物件ですね。ご老人が孤独死された記録があるんですけど、その方の趣味が石を集めることだったんです」
「ゴミ屋敷ですね」
「もっとやわらかく言って! 亡くなるまでは大事な宝物だったんだから!」
「遺品整理をしても、怪現象が起きて人が寄りつかなくなってしまったんですか?」
「そういうこと。はじめての動画なのでちょっと恥ずかしいけど、過去動画を流すより未公開動画の方が視聴者さんに喜んでもらえるかなって!」
「お見苦しかったらすいません」
「がんばるよ!?」
「今回の動画について、少しでも面白いなと思っていただけましたら高評価とチャンネル登録をお願いします」
「次回もよろしくね! ごちそうさまでしたっ!」
「ばいばい」
「ばいば〜い」
<コメント:新着順5件表示>
アカウント名:うちらはうちわ
閲覧注意ってあるから何かと思えばw
別に怖いこと言ってなくない?
勘違いで呪われる可能性があるってこと……?
こんなこと聞いたら今後漢数字で書くかアラビア数字で書くか迷うわww
アカウント名:スカーレットぶどう
未公開動画!?
楽しみ〜! あの頃は二号さんしどろもどろだったよね笑
アカウント名:まえだ
今日の動画、全体的にピント甘くない?
ピンボケ注意!にサブタイトル変えろよ。
アカウント名:優健右
やっぱり二号さん、今度は目の周りが痩けてませんか?
ちゃんと寝てる???
編集頑張るのはいいけど体調管理しっかり!!
アカウント名:R san
Thank you^^ Guys:>
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