10-3 解決編【また会う日までのご挨拶】
「ハイどうも〜! いただきますっ! 『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ二号ですっ!」
「三号です」
「え〜、最後の物件だったんですけど、どーーーーしても後編動画アップロードできなくってゴメンナサイ!!!」
「事故物件なんて巡っていたから、ツケがまわってきたんじゃないですか?」
「怖いこと言わないで!? 最近のYouTubeはAIが自動的に規制動画を判断するからねぇ。削除されちゃうと、どうにもこうにも……」
「一応、後編の内容を簡単にお伝えするとですね、あの後、無事に一号さんに会えました。おわり」
「簡単すぎるよ!? もうちょっと話して!!」
「白い部屋の浄化は、かなり時間がかかりそうです。一日で解決することは不可能なので、管理会社に連絡してそのように伝えました」
「当面の対策としては、そもそも立地が悪いから住居用じゃなくて他の利用方法を探して下さいってこと!」
「ケガレが溜まりすぎた場合、囲ってしまうと余計にケガレが悪化するので、開けたまま活用できる方法……公園とか、駐車場とかがいいと思います」
「事故公園とか事故駐車場とかってあんまり聞かないなぁ……ってことは、公園や駐車場なら大丈夫ってことだよね!」
「町中でも、付近に施設がないのに唐突に広い貸駐車場が現れるパターンってありますよね」
「あるある」
「公園をつぶしたり、不自然な場所にある駐車場を買い上げることはオススメしません。事故物件YouTuber的には」
「なにか理由があるかもしれないってことだから! ……あとは、一号のことについて話そうか」
「……一号さんは、相変わらずでしたね」
「そうだねぇ、僕らがよく知るいつものウスバカゲロウ一号だったね」
「また、どこかで会える気がします」
「うんうん! 僕たちもこの動画で皆さんとはお別れだけど、またどこかでお会いできる日を楽しみにしています!!」
「そういえば、このコンビも今日まででしたっけ」
「前編ではそんな流れになってたよね〜。まぁ、目的も果たしたことだし! 色々、ちょっと公の場では話せない事情があって視聴者さんに詳しい説明ができないのが心苦しいんですが……!!」
「みんな、三号たちのことなんてそんなに興味ないですよ」
「さみしいこと言わないで!?」
「コンビ解散と言っても、チャンネル削除はせずに動画はずっと残しているのでまた気が向いたらYouTube見て下さい」
「事故物件の依頼も今後は受け付けません! ゴメンナサイ!! 気になる方は最寄りの不動産屋さんに相談して下さい!! 店員さんの中には『この人、大丈夫かな……』って人もいるかと思うんですが……!」
「二号さんのことですね」
「ううう、うるさい! もうすぐ仕事に復帰するんだから、不安になるようなこと言わないで!?」
「やっぱり、不動産屋さんなんですか?」
「うん。イヤな思い出も多いけど、一号と出会った大事な職場だからね」
「また病まないで下さいよ」
「職種は同じだけど辞めたところとは別系列だから……! 僕も成長したし、たぶん、きっと……!! ああ、でも改めて言われると自信なくなるな〜……」
「もう大丈夫でしょ、浅葱さんなら」
「そう思うなら、本名呼び止めてよ!?」
「……名字を変えればいいじゃないですか」
「僕は男だから難しいと思うんだけど……!」
「婿養子とか」
「……誰かもらってくれると思う?」
「無理ですね」
「即答すぎる!!」
「わたし、……以外は」
「えっ? なんて言ったの?」
「なんでもないです」
「そう? あっ、また台本以外のこと喋っちゃった……! えっと、それでね、どの不動産屋さんにも大体一人は事故物件に詳しい人物がいるので、何度か訴えていたらプロが出てくると思います! 諦めないで!!」
「素直さも大事ですけど、時には疑う心を持って下さい」
「僕たちは、事故物件に悩む方々を応援しています!」
「三号たち『ゴーストイーター』の動画が、視聴者さんのヒントになればうれしいです」
「それじゃ、皆さま! 今まで本当〜〜〜〜っに、ありがとうございました!!!」
「………」
「……ねっ! あれっ? 三号くん?」
「………」
「さんごうくん……! ありがとうございましたって言って……!」
「……二号さん」
「ん?」
「顔にゴミ、ついてますよ」
「えっ!? 動画撮る前にチェックしたのになぁ。でもマスクしてるから別に……」
「瞼の上に乗ってます」
「最後の動画なのに!? ちょ、ちょっと取ってくれない? せめて最後の挨拶ぐらいは……!」
「じゃあ、こっち向いて目を閉じて下さい」
「うん」
「………」
「うん……?」
「………」
「三号くん?」
「まっ、まだ目を開けちゃダメです!!!」
「はいっ……!」
「………」
「えっと……?」
「………」
「ぼ、僕、自分でとろうか?」
「黙って下さい」
「黙ります……っ!」
「………」
「あのぅ、もう動画の尺、が……ッ!?」
「……んっ!」
ガンッ!!!
「あ痛あぁっ!?!?」
「あれ……? 失敗しましたね」
「えっ? ええっ? ちょっ、ちょっと何!? なになに!? えっ、まさか……」
「キス……の、つもりだったんですけど」
「強烈な歯と歯のぶつかり合いだったんですけど……ッ!?」
「不慣れなもので」
「マスク越しだし!!」
「外した方が良かったですか?」
「そ、そうじゃなくて……っ!! どっ、動画でやることじゃないよね!? いや、動画の外でもだよ! あっ、そういえば柔らかかったかな……」
「声が大きいですよ。最初に仕掛けたのはそっちでしょ」
「誤解を招くような表現はやめて!?」
「やられっぱなしは、性に合わないのです」
「ええ〜……!! りっ、理不尽だ、なぁ……もう……」
「なに顔を赤くしているんですか。気持ち悪い」
「ズルい!! キミ、自分は黒マスクしてるからって!!」
「浅葱さんもライオンのハーフマスクしてるでしょ」
「これは目元しか隠れないタイプなの!! 那由多くんだって耳が赤いんだけど!?」
「本名やめて下さい」
「あっ……そっか。ごめんね……」
「危機管理能力の低下」
「な、なんか腑に落ちないんだけど?」
「気のせいです。最後の動画ですし、サービスですよ」
「サービスって……誰向けなの?」
「………」
「何もない空中を眺めるのやめて!? こわいから!!」
「……まぁ、そういうことなので」
「どういうこと!?」
「今まで、本当にありがとうございました。YouTube、楽しかったです。思い切ってはじめて良かったです」
「あっ、そこに繋げるんだね……!!」
「三号たちは、これからもどこかで生きていきます」
「そうだねっ! 頑張っていこう!」
「アナタの部屋、私たちが過ごした事故物件かもしれませんよ〜?」
「よしっ! そこは台本通りだ!」
「つまんない台本でしたので、アレンジしてみました」
「おかげで心拍数ヤバいんだけど……!!」
「大丈夫ですか?」
「キミが言う!?」
「またグダグダになってます」
「そっ、そうだね……! いや、この動画公開しちゃっていいのかなぁ。いっそ撮り直した方が……」
「いいですよ」
「やっ、やっぱり撮り直す?」
「このままで……いいです」
「そう? だって……」
「キスなんて、ただのドッキリですよ。マジになっちゃうなんて恥ずかしい」
「悪かったね!? キミが相手だからだよ!?」
「誰が相手でも、浅葱さんはそんな感じでしょ。誰にでもやさしいし」
「そ、そんなことない……!! 僕は、僕はキミだから……」
「……私、だから?」
「こんなにドキドキするし、ソワソワするし、うれしいし、たのしいし、ええと、その、つまり……!!」
「はい」
「僕がやさしくしたいのは……、世界で一番やさしくしたいのは……っ、キミだけなんだよっ!!」
「そうですか」
「反応、薄っ!!」
「もう一押しお願いします」
「んんん……どっ、動画の後で言います……っ!」
「絶対?」
「ぜったい、です……!!」
「じゃ、さっさと終わらせましょう」
「切り替えが早い!?」
「じゃあ、ごちそうさまでした」
「そこは二人で声合わせよう!? せーのっ!」
「「ごちそうさまでした!!」」
「ばいば〜い!」
「ばいばい」
『最後まで僕たちっぽい動画になってしまいました笑
お付き合いしていただき、ありがとうございますっ!!
それではっ!
ごちそうさまでした!!
視聴者のみなさんのこと
僕たちは本当にあいしてます!
だから、ばいば〜い!!!』
<コメント:新着順5件表示>
アカウント名:リリーの極み
ずっと思ってたけど……三号くんって、もしかして女の子ですか?
最初の動画よりすごく可愛くなった気がする……。
『ゴーストイーター』は新旧どちらもコンビ愛に溢れていて大好きでした!
さみしいけど、バイバイしましょうか。
アカウント名:NA。
なんか一号さんが死んだみたいに言うのやめてよ笑
見つかってよかった!
いつか三人で再結成してね!!
ばいばい!!
アカウント名:アルクサン
ドッキリww
最後の最後にノロケられた笑
編集技術とかカメラワークとか構成とか未熟なところもかなりあったけど、思ったよりお前らの動画たのしかったな〜。
ばいば〜い!
アカウント名:花園のどか
最初の動画に、コメントした者です。
あれから不動産屋に問い合わせたところ、自宅が事故物件であることが分かりました。
今は引っ越して、快適に暮らしています。
お二人の動画を見て良かったです。
ありがとうございました。
バイバイ。
アカウント名:R san
Good-bye^^
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