第49話 帰国便消失事件
長かったダンデライオン一座の足跡をたどる旅も最終目的地のウィーンで終わりを迎えた。けがや病気、機材の破損などのトラブルに見舞われることもなくここまで来られたのも日ごろの行いの賜物か、などと考えながら帰国便が待つウィーン国際空港へ向かっていた。予定よりも少し早めの到着になりそうだったため、チェックインを済ませてからコーヒーでも飲もうかと思いつつフライト時間を再確認するためにエクスペディアのスマホアプリを立ち上げたところで違和感に気がつく。フライト番号の横に見慣れないマークがついているのだ。
違和感の正体。それは「キャンセル済み」の文字。おかしい、自分で予約をキャンセルした覚えは全くない。一体何が起こったのかを理解できないまま、とりあえず航空会社のカウンターに向かい、予約情報を伝えて状況確認を依頼すると、オペレーターの女性は端末を操作しながら「ああ、そのフライトはなくなっていますね。飛行機がこちらに来ていないようです」と事務的に伝えてきた。そう、私のチケットがキャンセルされたわけではなく、フライトそのものがなくなっていたのだ。さて、これは参った。いきなり帰国便がなくなってしまったのだ。カウンターの中の女性はさらに端末を操作しながら「あちらのチケットカウンターで振替便の手配が可能かチェックしますので並んでください」と後方のに見える長蛇の列を指さした。なるほど、このカウンターに来る途中で見かけた人だかりは、このフライトキャンセルの影響だったのかとここにきてようやく理解した。
結局どうなったのか。当初の予定では中国南方航空のウィーン→アムステルダム→広州→羽田というフライトから、ルフトハンザのウィーン→ミュンヘン→羽田というルートに振り替えとなり、ウィーン空港での昼食券も手に入れることになった。結果的に楽な帰国ルートを確保できたことになったのだが、朝の空港で帰国便が消失しているというのは心臓に悪いので、できれば避けたいものだと痛感させられた一件だった。
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