第12話 宿無しの恐怖
ストライキでTGVが運休になった影響はまだまだ続く。バスでの移動になった結果、パリに到着したのは当初の予定から3時間以上遅れて夜9時過ぎ。バスターミナルからホテルまでは距離があり、結局ホテルについたのはかなり遅い時間になってしまった。
予約はしてあるから大丈夫だろうと正面玄関からホテルに入ろうとしたのだが、ここで困った事態に襲われる。入り口の扉がロックされていて中に入れないのだ。ロックを解除するためにはパスコードが必要らしいのだが、そんなものは持っていない。ガラス越しにフロントをのぞいてみても、受付時間が終わってしまっているらしく誰も見当たらない。予約の時には24時間チェックイン対応と書いてあったのになぜ……と恨み節が口からこぼれる。
本格的にまいったと途方に暮れていると、同じホテルの宿泊客がたまたま通りかかった。事情を話してみると「チェックイン時間過ぎちゃったのか。あっちに自動チェックインの端末があるみたいだから試してみたら?」と救いの手が!さっそく教えられた端末に向かい、これで助かったと液晶パネルに予約番号を入れてチェックイン……となるはずなのだが、端末には「そんな予約はない」と冷たいメッセージが表示される。予約番号は何度も確認して間違っていないはず。それなのになぜ…。一体どうなっているのだと、諦めきれずに端末操作を続けていると、先ほど助けてくれた男性がホテルの中から戻ってきてくれたではないか。
「ロビーでコーヒー飲んでたけどなかなか来ないから様子見にきたんだけど、まだトラブってるの?」
「予約番号を入力してるんだけど、該当する予約はないといわれて困ってるんだよね」
「もしかしてエクスペディア?だったらその番号じゃなくてメールで別の番号が送られてきてるはずだよ」
「マジかよ!」
スマホのメール履歴を必死で探すと、あった。確かにホテルからのメッセージとして番号が送られてきていた。その番号を端末に入力すると……できた!チェックインできた!ありがとう見知らぬおじさん!
おじさんとハイタッチして正面玄関と部屋のアクセスコードが印刷された紙を手に入れて、ようやく一息つけたのだった。こうして長かったフランス初日はどうにか無事終えることができた。
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