第50話 羽田に向かってダッシュ!
フライト消失事件で入手した昼食チケットを使ってウィーン名物のシュニッケルというとんかつっぽいものを食べ、晴れやかな気分で経由地ミュンヘン行きの飛行機に乗り込んだ。座席に座り、シートベルトを締めて離陸を待つのだが、一向に動き始める気配がない。10分経過…20分経過…30分経過。まだ動く気配はない。機内アナウンスでは機材チェックのためと説明はあったが、この調子ではどれだけ待つのか全く予測できない。最悪キャンセルになる可能性もあるなと思いながらも、すでに一度フライトを失っている身としては、もうどうにでもなれという気分だ。ただ一つ気がかりなのは、ミュンヘンでの乗り継ぎ時間は1時間半くらいしかないのだ。もしこのまま離陸時間が遅れると、ミュンヘンの空港でまた面倒なことになってしまう。
待つこと80分、ようやく機材チェックを終えて離陸体制に入ったミュンヘン行きの飛行機。もちろんこのまま予定通りの飛行時間でミュンヘンに到着したのならば、羽田行きの飛行機には間に合うはずもない。ウィーンとミュンヘンの距離では、後れを挽回することもできないだろう。
そんなことを考えていると、あっというまにミュンヘン空港に到着した。さて、とりあえずはインフォメーションで状況を確認しようかなと思いながら飛行機を降りると、「羽田空港行きの10人はここに集合!」と書かれた看板を掲げる空港職員が待ち構えていた。
時間との勝負が始まった。到着ゲート脇の扉から非常通路のような場所を走り抜けてミニバンに乗車する。ミニバンの向かう先は出国手続きなのだが、通常の出国ゲートではなく、おそらくこういう状況のために用意されていると思われる小さな部屋だ。ミニバンを降りると驚くような速度で出国手続きは行われ、10人済ませるのに3分とかからなかったのではないだろうか。出国手続きを済ませたメンバーが再び乗り込むのを確認すると、ミニバンは羽田行きの飛行機が待機する搭乗ゲートを目指して爆走する。
羽田行きフライト出発時刻の5分前。我々は無事飛行機に乗り込んでいた。空港職員の本気には脱帽するばかりだ。ただ、こういうことはできれば避けたいものだと朝の出来事に続いて思い知らされる一件だった。
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