第39話 巨大化しないけどボリューム満点
ギリシャの街並みはこれまで回ってきたヨーロッパ各国とは街の雰囲気ががらりと変わるものだった。それと同じように、レストランで提供される料理の系統も一変するのが面白い。さて、ギリシャの料理といわれて思い浮かべるのはムサカだ。グラタンやラザニアに似たこのギリシャ家庭料理はボリュームもあってとてもおいしいのだが、印象に残っているのは過去においしいムサカを食べたから、というわけではな。昔見た「アタック・オブ・ザ・ジャイアントケーキ」という謎の映画の影響だ。エイリアンが発した怪光線を浴びたムサカが巨大化してアテネの人々を襲い始めるというストーリーのこの映画は、この40文字にも満たない説明だけでもわかるようにかなりクレイジーな内容ではあったが、わざわざ横浜にあるギリシャ料理屋までムサカを食べるためだけに足を運ばせるほどの熱量があった。そんなムサカがどのレストランに行ってもメニューに書かれている。特にムサカが好きなわけではないのだが、それだけで少しうれしい気持ちになるのだから人の心とは不思議なものだ。
食べ物の話になったので、レストランでのやり取りも書き残しておきたい。旅先でレストランに入った時には、その店のおすすめを聞いてから何を注文するか決めることが多いのだが、ギリシャでこの問いかけをすると、シンプルな料理を進められることがほとんどだった。小魚の素揚げ、タコのグリル、イカの丸焼きなどシーフードを素材に合った形で手早く調理し、オリーブオイルとレモンをたっぷりかけて食べる。海に囲まれたギリシャらしい気概が感じられるおすすめの品だった。時間をかけてじっくりおいしく仕上げた料理もよいが、素材の良さで勝負するこういう料理も悪くないなと思い出させてくれる味だった。
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