第47話 元祖 vs 本家
ザルツブルグでの観光を終えウィーンへとやってきた。いよいよ本当に最終地点だと感慨に浸りながら、朝からナージャゆかりの場所や宮殿を巡っていた。歩き回った疲れをいやすためにカフェでコーヒーを飲みながら一休みしながらウィーンの様子をツイッターに書き込むと「ウィーンといったらザッハトルテの本場ですよ!」と教えてもらう。話を聞くと、ザッハトルテを考案したホテル・ザッハーと、ホテル・ザッハーから借金のかたに製造権もしくは名称使用権を取得したデメルという2店舗が世界のザッハトルテの総本山として君臨しているということが分かった。
そんなに美味しいものがあるのならば行かない理由はない。早速ホテル・ザッハーのザッハトルテが食べられるというザッハーカフェの場所を調べ、地下鉄に乗って店に向かう。店の前に行くと、数人が並んでいるものの、さほど待たずに入れそうだったので列の最後尾につく。10分ほど待っただろうか、店内に案内され席に着いた。メニューを眺めながら、ザッハトルテはもちろん頼むとして、飲み物はどうしようかなと迷っていると、ウェイターが低く響く声で「ザッハトルテには濃いめのストレートティーがよく合いますよ」と教えてくれた。おすすめに従ってザッハトルテと紅茶を頼み、到着を待つ。ほどなくしてテーブルに運ばれてきたザッハトルテと紅茶ポット。ザッハトルテを一口食べる。おいしい。紅茶を飲む。おいしい。余韻に浸る。ザッハトルテを食べる。おいしい。……つまり、とてもおいしい。なるほど、これが元祖の力というものかと、よくわからない感動に包まれながら、空になったケーキ皿を見つめ、席を立った。
さて、いただいたザッハトルテ情報にあったもう一つの有名店デメルはどのあたりにあるのかとグーグルマップで検索してみると、現在地から徒歩7分。予想以上に近い。歩いて行けるのならば食べ比べをしてみようと、デメルに向かうことにした。
到着したデメルはザッハーカフェとかなり雰囲気が違う。カフェ店舗ではなく、お菓子を販売する店舗の奥に数名が座れるカウンターが設置されている形式だ。運よく一席空いていたのでそこに座り、ザッハトルテを注文する。飲み物はここでもザッハーカフェのアドバイスを参考に紅茶を頼む。買い物客でにぎわう店内に漂う甘い香りを味わいながら待つこと数分、カウンターにザッハトルテが届けられる。一口食べる。おいしい。紅茶を飲む。おいしい。一口食べる。またまたおいしい。紅茶を飲む。おいしい。……つまり、デメルのザッハトルテも文句なしにおいしい。
日本語で言えば元祖と本家を争っているような二店舗のザッハトルテを、たった10分歩くだけで食べ比べができてしまう街・ウィーン。素晴らしいの一言だ。
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