第48話 城を見に行こう

 街を歩けば宮殿に当たる。さすがにそれは言い過ぎだが、宮殿巡りには事欠かないウィーンの街。でも、宮殿ばかり見ていると、たまには少し違うものが見たくなる。たとえば……城、なんてどうだろうか。貴族と言えば宮殿と城。そんな思いに突き動かされて、城を見に行くことを決意する。

 さて、行くことを決めたのはよいが、果たしてウィーンから気軽に行ける場所にいい感じの城はあるのだろうか。困ったときには現地の人に聞いてみるのが一番だと、夕食を終えてホテルに戻ったときにフロントで相談してみた。すると、ウィーンから北に行ったところにあるクロイツェンシュタイン城というものが面白いと教えてくれた。

 翌朝、ウィーンから電車で30分ほどの最寄り駅まで行き、そこから山の上に向かって40分ほど歩くと、立派な城が見えてきた。その姿は、まさしく中世の城。映画やゲームに出てきそうな風貌だ。

 さて、ホテルの人が言っていた面白いとはどういうことか。実はこの城、三十年戦争の時代に破壊されて廃墟になっていたものを、19世紀の終わり頃に再建したものだという。なので、歴史という観点では中世の城とはいいがたい。しかし、この城を再建した人物が相当な古城マニアだったらしく、ヨーロッパ各地の古城から中世っぽいパーツを探してはこの城に移植してきたということで、城内は中世の雰囲気が高純度で濃縮された構造になっている。また、武器庫にも大量の武器コレクションが所狭しと並べられていて、これから戦を始める準備万端といった雰囲気なのだ。

 実際に起こった出来事と合わせて城を楽しみたいという目的には合わないかもしれないが、とにかく中世の雰囲気を楽しみたいという目的ならば、強くおすすめしたい場所だ。

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