第44話 ピラミッドの青年
ご機嫌になったラクダに揺られてピラミッドの近くまでやってきた。ギザの三大ピラミッドは追加料金を支払うことで、その内部を見学できる。ラクダ使いのおじさんに、中を見てくるから少し待っていてくれと伝えると「中に入っても細い通路と狭い部屋があるだけで面白くないよ?暑いだけだよ?本当に行くの?」と止められるが、それが見たいんだよと制止を振り切って内部に潜入した。
……なるほど、確かに細い通路と狭い部屋だけだなと妙に納得しながら奥の部屋に到達すると、一人の青年がしゃがみこんでいた。体調でも悪いのかと声をかけようとすると、どうも様子がおかしいことに気が付く。壁や床をさすったり、こぶしで叩いたりして何かを確認しているようだ。何をしているのか軽い気持ちで聞いてみたところ、青年はこちらに振り向くとものすごいスピードで話し始めた。あまりの早口に聞き取れない部分もあったが、どうやらピラミッドの石材がどこから運ばれてきたものかを確認していたということらしい。ひとしきり話し終わると、満足げな表情を浮かべつつまた別の壁をチェックしはじめた彼を残してピラミッド内部を後にした。
外に出て再びラクダに跨る。ラクダ使いのおじさんがニヤリとした表情で「ね、何もなかったでしょ?」と問いかけてくるが、そうでもないよ、いいものに会えたよと答える。おじさんは不思議そうな顔をしつつも、それならよかったとラクダを前に進ませ、ラクダ小屋へと帰り道を進んでいった。なかなか面白い砂漠の旅になった。
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