第32話 +20時間
イタリアを離れて次に向かう先は情熱の国スペイン。飛行機を使えばイタリアから2時間とかからない場所だ。しかし今回の旅では飛行機は使わない。ではどうするか?答えは簡単、ナージャたちダンデライオン一座と同じ船旅だ。もちろんナージャたちと同じように貨物船に乗せてもらい、海賊船と戦いながら地中海を越えるという体験はさすがに難しく、おとなしくオンラインでチケットが購入できるフェリーに乗船することとした。
夜10時にローマ北部の港町チビタベッキオを出港し、スペインのバルセロナに到着するのが翌日の夜8時。おおよそ22時間かけて地中海を横断する船旅だ。夏場は遅くまで明るいヨーロッパでもさすがに夜10時ともなるとあたりは真っ暗になり、暗闇に黒煙を上げながらフェリーは出港した。
フェリーには背もたれ付きの椅子で眠る自由席、シャワーとトイレが備え付けられた4人部屋と2人部屋が用意されている。今回は4人部屋を選択したのだが、自分以外に同室となる乗客は現れず、結局スペインまで4人部屋を占有する優雅な旅となった。
さて、今回は個室を使用したのだが、出港後の船内を探索したところ、いたるところに置かれているソファーなどに陣取りキャンプのようにくつろいでいるグループを多く見かけた。家族や友達グループなど複数人で旅をするならばこういった過ごし方も悪くない、むしろ楽しそうでうらやましく感じるほどだった。船内のところどころには「ここでのキャンプは禁止」という掲示板があったので、船内の自由な場所で陣を張ることは一般的なのだろう。
22時間もかかる国際航路となると、船内設備も充実している。スポーツクラブにカジノ、ゲームコーナーにプール。だが結局それらの施設はほとんど利用することはなかった。上部デッキにあるバーで軽食をつまみながらドリンクを飲み、どこまでも続く地中海をただ眺めるだけで時間は過ぎていった。やっぱり飛行機にしとけばよかったかな、という乗船時のわずかな迷いを海風で吹き飛ばしながら。
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