第6話 熱海かよ!
今回の旅の目的は、ダンデライオン一座の足跡をたどりナージャたちが感じた空気をその自分の肌でも感じることだ。ナージャが育ったアップルフィールドから旅の第一歩を踏み出す……予定だったのだが、アップルフィールドのモデルとなった場所が分からない。そもそも、実在するのかも不明という状況だった。悩んで立ち止まっていても何も進まないので、ロンドン近郊にあり、かつ森と丘と草原という風景が似ている場所を探した結果、くまのプーさんの故郷として有名なハートフィールドを仮想アップルフィールドとして、そこに向かうことにした。ロンドンからハートフィールドまで行くためには、まずロンドンブリッジ駅から45分ほど電車に揺られてタンブリングウェル駅まで行き、そこからローカルバスで30分ほど移動することになる。
ところで、ロンドンには地下鉄や近郊の列車に乗れる非接触型ICカードのOyster Cardというものがある。日本のSUICAのようなチャージ式で、切符を買うよりも割引料金で乗れるというメリットもあり、今回の旅でも便利に使用していた。ハートフィールドへ向かう際にもこのOyster Cardで入場したのだが、今になって思うと「ロンドン近郊限定」という文字が危険な匂いを放っていたことに気が付く。
一時間弱の電車旅を終えてタンブリングウェル駅に到着し、外に出ようとOyster Cardを自動改札機にタッチした時に事件は起こった。ゲートは開かないのだ。チャージ金額は足りているはずなのになぜ、と困惑しながら改札前であたふたしていると、窓口のおじさんは手招きしているのが目に入った。状況を説明すると、「ここはOyster Card使えないよ」と冷たい言葉が返ってきた。そう、このタンブリングウェル駅はOyster Cardの範囲外だったのだ。カードが使えるように見える改札機が対応しているのは別種類のカードらしく、窓口で説明聞きながら「熱海かよ…」という言葉が漏れるのも仕方がないというものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます