第八話 暗闇が考えを加速させる
頼まれたモンスターの討伐に成功した太一たちは洞窟を戻り、入口に待機していた兵士たちに話を済ませ王城へと戻っていた。
その帰り道、日が暮れたころに適当な平原にキャンプし、夜を明かそうとしていた。
本来ならモンスター討伐を実際に行った太一が一番疲れているはずだが、暗くなり横になってもなかなか寝付くことができない。太一の頭の中には黒い渦のような感情が湧いていた。
火の番をしていた兵士と変わってあげた太一は、焚火と星の明かりしかない暗闇の中で考えを巡らせていた。ちなみにこの異世界には月のような衛星はないらしい。
太一は焚火を正面にして、
しかしあまりに変わりすぎではないだろうか。有人は他人の印象が悪くなるようなことを言うようになってしまった。
以前から馬鹿だと思ってはいたが、そのようなタイプの馬鹿だとは思わなかった。人を思いやり、人に尽くすゆえに自分のことがおろそかになるような、そんな馬鹿だと思っていたのだ。
愛厘も変わってしまった。太一は愛厘のことが好きで、愛厘もきっと太一のことを好きでいたはずだ。
それなのにその距離をなかなか詰め切れないでいる。その距離感が微妙に心地よく、互いの関係が一番うまくいくような気がしていた。
変わった愛厘はその距離を急に詰めてくる。それは太一にとっても望んでいたものだし、いつかは自分からと思ってはいたものの、やはりいきなり来られるとどうしても引っかかるものがある。
太一も思春期がとっくに来ているので変な妄想をしたことがないわけではない。愛厘と恋人になってキスをして、エッチをして。そのまま結婚をして子供をつくってと考え
しかしだ。そうなりたいと思ってはいても、目を開けたらいきなり愛厘に挿入させられていたなんてことがあったら、思わず引っこ抜き距離をとってしまいたくなるじゃあないか。
それを望んでいたとしても、はっと気づくと豊満な愛厘の胸で往復ビンタされていたとすれば、身をのけ反り逃げ出したくなるじゃあないか。分かってくれ!
とにかく明らかに変わってしまった二人を想い、どこにあるかも分からない地球に向かって思いを馳せる。
しかし人格までは完全には戻らなかった。何らかのイレギュラーが発生したのか、あるいは魂の再生まではできず似たような魂を代わりに入れるような魔法なのか。
太一はもう一度揺れる炎に目を移すと、一つの人影が近寄って来ているのに気づく。
「愛厘?」
太一は振り返り、思わず一番望んでいる人物の名前を呼ぶ。だが、そこにいたのは天使であった。
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