第三十三話 異なるもの
「ごめんね。私にはちょっとブカブカだから」
「私もちょっと大きいみたい」
生き残った他の女兵士にも着てもらったが、用意されたメイド服は彼女らには少し大きいようだ。そんなんじゃあ、着て行けないよな。そうだよな。
「――だからって、私には小さすぎるんじゃああ!」
ジュスティーヌは女性の割には体は大きく、発育も抜群だ。メイド服が生地の最大まで伸び、正直言ってよく耐えているなと生地を誉めたくなる。
ということはこのメイド服の生地はとても丈夫なんじゃあないだろうか。防御力という観点から、ぜひともジュスティーヌには常日頃この服装で戦ってもらいたいものだ。
「剣は置いていったほうがいいだろう」
「いや、むしろ剣を携えたほうが戦うメイドさんとして一部の熱い支持を得られるかもしれない」
「そうだな。じゃあ、猫耳も頼む――」
「お前ら何言ってんじゃああ!」
そんなこんなあり、ジュスティーヌは大きな洗濯
籠は置いてきた幽奈はもちろん残りの兵士たちも全員入るほどの大きさだ。
「本当に剣を持って行くとはな」
「マジカルラブリンメイド剣士の爆誕だな」
籠を押し進む彼女の顔はさすがに強張っている。魔族たちはそんな彼女の姿を
◆◆◆
バタン。
ゴワゴワに膨らんだ洗濯籠が通り抜け、扉が閉められる。中からもみくちゃになった幽奈と十名ほどの兵士たちが顔を出した。
「生きてる心地がしなかったよ~」
「ご苦労様。幽奈、早速なんだが皆を治癒してくれないか」
太一は人の死体の転がる惨劇を示し、幽奈はすぐにそれに従う。幽奈はとても張り切っているようで、潤んだ髪を耳にかけ治癒に専念する。
すでに息絶えたらしい兵士に向かって手をかざす幽奈を見て、リサはおどろおどろしいものを見ているような態度をとっていた。
「にしても改めて見てもすごい格好だよな」
「ああ、僕の知っているジュスティーヌじゃないみたいだ。幼いころはただ動き回ってた女の子だったのに、今じゃ動き回るごとに発育した体が揺れているしね。いっそのこと剣士を辞めたらどうだ? その体じゃあ動き辛いだろ?」
「辞めないよ! 辞めたらタイチ君と一緒に戦えないじゃあないか!」
ジュスティーヌは一回り小さいメイド服で強調された自分の体に不服なようで、早々に元の服装に着替えに行ってしまった。
太一たちはこの建物内に捕らえられていた――といっても、
「本当に、あの子が死んだ人たちを生き返らせることができるんですか? しかも、ミカエルのようなことにはならずに……?」
「ああ、ユウナは人の命を蘇らせることができる」
にわかには信じられないが、目の前では次々と兵士たちが息を吹き返し体の調子を確認しているのを目撃する。誰も快活そうに手足を動かし、驚き喜んでいるのが見て取れた。
「――ってことはユーフェイも生き返るの?」
「生き返るさ。なあ、タイチ?」
ローブの男に質問をされ、太一はとっさに言葉に詰まる。
生き返ると言えば生き返るが、実際は性格や人格が少し変わってしまう可能性がある。それをリサは受け入れることができるのだろうか。
今蘇ったばかりの兵士たちを見てみると、特別何か変わったところがあるようには見えない。
しかし、親しい者から見れば何か変わったところが見つかるかもしれない。やはり死なせてしまったことには変わりがない。
「なあタイチ、どうした?」
どう言葉を出すか迷っていた太一は、呼びかけに慌てて言葉を出した。リサが悩ましそうにこちらに目を向けている。
「生き返る……と思う。少なくともミカエルのようにはならない。体はしっかりと元通りになる」
「じゃあ、ミカエルは? ミカエルも元に戻るの?」
「俺が分かるのは幽奈が
太一はすでに兵士のほとんどを蘇生し終えた幽奈に声をかけ、ミカエルのところに呼び出した。
「幽奈。この子はミカエルっていって、元は俺たちと同じ人間だったんだ。それが魔族の人体蘇生の実験でこんな未熟な体で再生されてさ。お前だったら、こいつを今から元の人間の形に再生できるか?」
「ちょっと調べていい?」
幽奈はしばらく構えた後、ミカエルに手を当て何かを探るように体の下から上へと移動させる。時折、幽奈は首を
「太一君。この子、おかしいよ。二つの異なる細胞で体が作られてる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます