人体蘇生ーリザレクションー

ハムヤク クウ

第一章 これは夢か現実か 冒険の始まり編(約4万字)

第一話 殺された仲間

 細身で運動らしい運動は高校のサッカー部でのトレーニングくらいしかしたことがない青年、富良野太一ふらのたいちは魔法で具現化した大剣を両手で握っていた。

 やはりこんな大剣を振り慣れていないせいか、戦い始めて5分と経たずに息があがってしまっている。


 目の前には土色をした体長三メートルはあるであろう巨大なカエルのようなモンスター。両者は洞窟の中で相対し、仲間の光魔法で照らされている。

 その光が届くか届かないかの微妙な薄ぼんやりとした場所にいるのは太一の三人の仲間である。


 魔法使いで親友の倉門有人くらかどゆうと。両思いだが、今だ恋仲になれないでいる拳闘士の座部愛厘すわりべあいり。あまり喋ったことのない無口な治癒術師、天使幽奈あまつかゆうな


 太一はその三人のことが気になって仕方がない。チラチラとその場所を確認してしまう。


「なあ、本当に二人は助かるんだろうな!?」

「う、うん。私の治癒術、人体蘇生リザレクションのおかげで傷口が治っていってるよ」


 これより少し前、四人は洞窟に入ってこのカエルのモンスターにばったりと出くわし、その戦闘に苦戦してしまったために有人と愛厘の二人が致死量のダメージを受けてしまったのだ。


 太一が最後に見た二人は、胸の辺りをカエルの鋭く尖った爪で貫かれた姿であった。というか、地球にいたカエルに爪なんか生えていただろうか。そういう点を取ってみても、やはりこの世界は地球とは異なる異世界という場所なのだろう。

 太一たちはあまりに不自然なくこの世界に存在できるものだから油断をしていたのだ。


 そしてもう一つ、戦闘なんててんで素人の太一たちがを聞いて洞窟までやって来て、モンスターを倒せると思ってしまった最大の油断の原因は仲間である天使幽奈の治癒術があると思っていたからだろう。


 彼女の最上位治癒魔法――人体蘇生リザレクション――。この魔法があると知ったおかげで最悪へまをしても助かると思ったからに違いない。


 そんな油断、不注意、怠慢から一変、二人の無残な姿を目撃した太一は気を引き締めて目の前のカエルと対峙していた。

 胸を貫かれた二人はピクリとも動かなかった。太一は本当は泣き崩れてしまいたかったが、狭い洞窟内で今もなおリアルで感じるモンスターの荒い息遣い、戦闘向きの能力を持っているのが自分だけだということもあり必死で剣を握っている。


 太一は懸命に願った。二人の体が元通り生き返って欲しいと。有人は自分の親友で、愛厘はこの迷い込んだ異世界で一番の大切な人である。だから、どんなことがあってもいいから二人が無事生き返って欲しいと。


 そもそもどうして太一たちはこんな洞窟まで来ることになったのだろうか。それはちょうど三日前にさかのぼる。

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