第三十七話 させるかよ
「ウァァアア……!」
耳を突くような悲痛の叫び声が扉の奥から聞こえてくる。その声はまさにジュスティーヌのものだった。
太一がリサに案内されたのはかつて彼女がポワレに連れて来られた部屋で、人体実験室も兼ねた部屋らしい。
太一は宙から剣を取り出し、扉を勢いよく開ける。そこには血だらけで這いつくばっているジュスティーヌの姿があった。
「ジュスティーヌ!」
部屋にはほとんど何もなく。机と中央にベッドのようなものがあるだけだ。天井に吊るされた光の球が
ポワレは鎖をブンブンと振り回し、その先についた鉄球をスイングさせながら佇んでいた。
「おお、お前も来たか。ちょっと待ってくれ。今こいつの魂が輝いている、最高にいいところなんだ」
「何が……いいところ……だ。馬鹿に……して」
ジュスティーヌはヨレヨレと足を動かし剣を拾うと、ポワレに向けて剣先を合わせた。その途端、ポワレの鉄球が腹に突き刺さる。
「おいおい、お前が剣を握ったら鉄球を投げると言っただろ。なのにどうして剣を拾うんだ」
「……お前を倒すためだ。私には……剣しかないから。生まれついて持った魔法と……お父さんに習った剣術で……お前を倒すんだ。私は剣士なんだから……!」
再び剣を拾おうと動くジュスティーヌの地面からポワレの土魔法でできた岩石が勢い良く生えてくる。それはジュスティーヌの右腕を激しく
「いいぞ、それでこそだ! 自らの使命に強く突き動かされる人間。そんな奴の魂は強く輝き、熱い生命力に満ちているに違いない! お前こそ、初めて完璧な体を持って魂が再生される実験動物となるかもしれない! 中途半端な魂だと化物になっちまう。お前を殺して、魔王様に魂の再生術の完成を報告するんだ!」
ジュスティーヌは右腕を抑えながらその場にうずくまっている。その上からポワレは鉄球を叩きつけようとしていた。
「――させるかよ!」
太一の剣がポワレの鉄球を真っ二つに斬り落とす。ポワレはその瞬間、口の端を大きく吊り上げて笑った。
「大丈夫か、ジュスティーヌ!?」
「タイチ君。来てくれたんだね……。守ってもらっちゃってごめんね。本当は私が命を張って守らなきゃいけないのに……」
「そんなことはない! ジュスティーヌは自分の命の心配さえしてくれればいいから!」
「ごめ……んね、ングゥゥウウ……!」
ジュスティーヌは全身から血を流し、欠けた右腕は遥か遠くへと飛ばされている。しかし、右腕の傷口からは出血がほとんどない。
よく見ると傷口辺りが見えない何かで強く縛り付けられているように圧迫されている。きっとジュスティーヌの風魔法で傷口に圧力をかけ、血管を
「待ってろよ、ジュスティーヌ。すぐにこいつを倒して、治してもらうからな」
太一とポワレが向かい合って戦闘態勢をとっている。ポワレの表情はとても愉しそうであった。
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