ネガティブを憎んで、人を憎まず
一四、五年前の話。
就職のために東京へ引っ越すツレのため、飲み会が催された。
そこで寄せ書きを頼まれる。
オレの番は大トリ。
寄せ書きを見せてもらう。
頑張れ頑張れ頑張れ……。
吐き気がした。
「ああ、誰もコイツの『逃げ道』を作ってあげないんだな」
と。
結局、応援も拒絶もしない、他愛のない雑談を書いて渡した。
誤解がないように言うと、応援にあふれた寄せ書きを受け取った側は、心底喜んでいたはずだ。
「こんなにも自分を応援してくれているんだ」と。
応援している奴らも、本気で応援したに違いない。
どう言ってあげていいか分からず、単に当たり障りのないエールを送ったヤツは少ないだろう。
(そんなヤツに思われるのはイヤって気持ちは、確かにオレにはあったが)
だが、オレには無理だった。
「逃げ道を与えてあげないと!」と、脳が応援を拒絶した。
そうしないと潰れる奴もいる、と思って。
また、オレは
「頑張れば、なんでも報われる」
といった、当時の世相には懐疑的だった。
(小泉内閣の頃)
「いや、ちゃんと分析すべきだ。でないと努力は無駄になる」
と、当時からなんとなく分かっていた。
ムダに頑張ったら、いいように食われるな、と。
そっからビジネス系の本を読んで勉強するようになった。
実は、この飲み会以前に、身内に不幸があった。
その経験から、オレは未だに、
「人に頑張れと言いづらい性格」
になっている。
応援したい気持ちは、もちろんある。
だが、ネガティブすぎる人には逆効果だと、学術的にも分かってきた。
今の時代、
「誰かが給水ポイントになること」
は大事だ。
オレは、ヘタにエールを送るより、疲れている人に向けて、
「お茶でも飲むか?」
と言ってやれる人になりたい。
こんなことを言うと、
「ネガティブなヤツは敵なのか?」
と思う人が出てくるかも知れない。
オレの敵は、ネガティブな人ではない。
人のネガティブだ。
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