「いや、リアルだとこうだったんですよ!」の落とし穴 体験談を小説化するときの注意点
あなたはよく、自己の体験談をエッセイなどで書いて、
「いや、スゴイ体験談ですねー。小説になさってはいかが?」
と言われたりしないだろうか?
それで、
「そう? じゃあ書いてみようかしら」
とか思っていないだろうか。
もしくは、「そんなにうまくかけないよ」と封印してしまうか。
それでもって、心の引き出しの奥にそっとしまわれる。
ちょっと待った!
オレは、それに待ったをかけたい。
確かに、
「ノンフィクションを元にした作品は、たいてい地雷」
だよ、と言いたい。
微妙な自伝を小説講座で散々読まされたオレは、
『個人の体験談を小説にするのは「デメリット」でしかない』
と思っている。
理由は簡単。「ちゃんと小説向けに、味付けしていないから」だ。
小説講座で出される内容の中には、自身の体験談を「そのまま」書いた作品も出てくる。
ひと言で言うと、オチがないのだ。
詐欺に遭った話だと、泣き寝入りするだけ。そこから主人公は奮起もしない。
「こんな目に遭わないようにしよう」と、細々と生きる。
トラブルが発生したかと思ったら、主人公が「まったく活躍せず」、警察がすべて解決。
これには、講師も大困惑。
「どう展開していいか分からない」から。
「着地点の分からない作品」にたいし、なぜそんなプロットになったか当然尋ねる。
すると、作者はみんな、口を揃えてこう言うのだ。
「いや、現実だとこうだったんですよ!」
と……。
「せやから、そうやなくて、物語書いてこいやって言うてんねん!」
と、講師が上記の苦言を「やんわりと」伝える、というところまでがテンプレだ。
これ、多分なんだが「当事者と読者の認識にズレが発生している」可能性が高い。
おそらくちゃんと小説向けに味付けしたらずごく面白くなるはずなのだ。
しかし、本人には
「事実は小説より面白いから、きっと脚色しない方が面白いはずだ」
というバイアスが掛かっている。
オレはこれを、
「事実は小説より奇なりバイアス」
と呼んでいる。
こうなってしまうと
「いや、事実だと甲だったんですよ!」
と、さも「事実の方が物語より面白さが上である」と主張し始めてしまうのだ。
きっと、体験談を「書けない派」の人は、このバイアスに気づいていて、
「おそらく、面白くならないだろう」
と考えている。
トラブルを恐れている、もしくは思い出しすぎて物語として昇華しきれないのだ。
では、このバイアスに掛からないようにするためにはどうすればよいのか。
また、自分でもネタにすれば面白い話を、いかに腐らせないか。
・他人に書いてもらう
体験談を作家志望者の他人に話し、脚色してもらう。
そのとき、個人情報などは極力伏せることもお忘れなく。
「これ、俺の話だろ」とかなって、トラブルになることがあるので。
・別の主人公を設けて、第三者の話として書く。
例えば、織田信長が詐欺に遭う話にするとか。もう殺すわな、詐欺師とか。
トラブルをふっかける隣人の正体が、実は宇宙人だったとか。
異世界にするのもいいだろう。
とにかく、自分の体験談を「フィルターなしで提供」することは、控えた方がいいかな、と。
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