第14話 異変
夜も更けた頃だった。
「ふたのは」
ふたのはは刃の声で目が覚めた。暗闇で、刃の表情は見て取れない。だが、何も言わないことが、却って事の急を語っていた。ふたのはは隣で寝ている与四郎を起こさないよう、そっと床を出た。部屋を出るとそこには難しそうな顔をした一座の者が揃っていた。
「城の様子がおかしい。どうする?」
ふたのはは身を翻して外へ出た。続いて出て来た刃がふたのはの視線に合わせて城の方へ向けた。だが、何も分からない。
「ここから見ただけでは詳しいは分からん。だが、城下もざわついている。偶然城の近くに居た町の者が何かを見たらしいのだが……情報が交錯していて何が真実か分からん」
やがて、一座の若い男が慌てて戻って来た。がっしりとした大きな体つきの男である。
「巌、戻ったか。して、」
刃がその男、巌に近づき、腰を落とした。走るのは得意ではないらしく、地面に膝をつき、大きく息をしている。だが、それは、体質だけの所為では無かった。
巌は、城の中から人目を避けて抜け出してきた者達から話を聞き出してきたのだ。巌の顔は血の気を失い、唇を震わせている。
「……と、殿様が……」
「殿様が? どうしたの?」
ふたのはの顔色が変わった。巌の肩を掴み、強く問い質す。
「謀反の疑いをかけられて……な、亡くなられたって……」
「ふたのは!」
ふたのははその言葉を最後まで聞かずに走り出していた。後を追おうとした刃を別の若者が止めた。矢取と呼ばれる、巌とも仲の良い男である。
「頭は皆の傍に。何があるか分かりませぬ。ふたのは殿は私が」
「頼む」
頷き合うと、矢取はすぐに走り出した。
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