第35話 繋がり

朝靄が出ていた。

 あの日のように。

 だが、あの日と違って、与四郎の心は晴れていた。刃にも、あやねにも、早手にも、そして、他の皆にもきちんと別れを告げることができた。そして、その全ての人が、再会の約束を口にしてくれた。

 その約束が、守られ難い時だからこそ、誰もがそれを口にする。まるで、それを口にすることそのものが、一種のまじないであるかのように。それに、実際に効力が在るのかどうかは分からない。だが、そこに込められた想いは、確かに本物で、温かなものだ。

 それだけで、与四郎は笑うことができた。

「次に会う時は、二人の赤子が見れたらいいな」

前の別れの時、自分に、あやねに対する未練が全くなかったと言えば嘘になる。だが、今は無いと言えた。二人が、皆が幸せになってくれることが心底嬉しい。喩えそれが、自分の存在がそこから消えたことで、生じたものであるとしてもだ。

 生きる世界を違えても、繋がる何かが確かにあると信じられたから。

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