第32話 酒

 与四郎が戻ると、一座の者は出立の準備をあらかた終えていた。また、別の町へ行こうというのである。

「頭」

与四郎は刃に声をかけた。顔を上げた刃は、与四郎の顔を見て、大体のことを察した。

「出立は明日だ。今夜は皆で酒を飲むつもりだったが……」

そう言って、顎を擦った。

「お前と二人で飲むのも良いな」

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