第51話 膠着
両軍はその後、何日も膠着状態にあった。その間、武田軍が移動したとか、そういった情報がちらほら聞こえてきたが、上杉軍に動く様子は無かった。
長く戦場にあれば、兵の疲労も重なってくる。精神的にも、肉体的にもきつい。黒風も、気分的にも肉体的にも落ちて来る自分を、どうにか整えようと必死であった。誰もがそうであっただろう。
そういう時に、下手に郷里のことを思うと、里心がついてしまう。それを力に変えられればそれに越したことは無いが、戦意が喪失してしまうようではいけない。
(あの人を、守らなければ)
黒風は、それだけを思っていた。体が鈍らないように、何度も得物を確かめる。黒風はいつもの短刀だけを持っていた。そのため、修練をするにも場所を取らない。それも、この獲物の利点であった。その、決して大きくはない刃で、自らの弱気を切る。そのつもりで、振るった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます