中盤戦
ツチノコ(36番 未確認生物)
第40話 ろっじへ
オレは、静かに、そろりそろりと歩いていた。
暗い道をゆっくりと、大きく迂回しながら。
それがなぜかと言うと、おぞましい気配――恐らく他のフレンズを潰して回っている誰かに追いかけられたからだ。
いや、すぐに撒いたさ。
相手が、どれだけ身体能力が高かろうが、暗いところに潜むのは得意だからな。
それに『ピット器官』がオレにはある。
相手がどこにいるのか一方的に丸見えなんだから、オレが捕まるはずもないしな。
ん? オレが誰かって?
ツチノコだよ!(36番 未確認生物)
向かっているのはもちろんロッジだ。
助手と、かばんと約束してたからな。
でも、すごい遅くなっちまった。
何でこんなに遅くなったかというと、さっき言ったとおりだ。
トキを助けに行って、助けられなくて、引き返している途中、誰かに襲われたんだ。
顔は見えなかった。
だから、それが誰かまでは分からなかったけれど、ずいぶんと俊敏な奴だったと思う。
実を言うと、襲われるかもって不安はあったんだ。
トキの元へ行く途中、誰かの腕時計が作動する音が聞こえたからな。
多分、トキと、ロッジの間にいた奴が、トキの元へ行こうとして、潰されたんだと思う。
後になって考えたんだけど、腕時計の作動した音の回数と、モツゴロウの放送から、その時鳴ったのはクジャクの腕時計の音だと思う。
で、時間的に見て、トキの風船を潰した奴とは別の奴がクジャクの風船を潰したと言うことだと思ったよ。
恐ろしいことだと思う。とても。
やる気になってる奴が、一匹だけじゃないってことだからな。
と、まぁ、そんなわけで、俺は警戒していた。
来た道を帰っていたんだから、クジャクの風船を潰した危険な奴とバッタリ、なんて十分あり得る話だからな。
そんな分けで、実際に襲われた時もとっさに動けた。
相手が攻撃してくるのを感じた瞬間に逃げて、すぐに夜の闇の中に潜んだ。
トキが潰された時点で陽が沈んでいたし、真っ暗になるのはすぐだったからな。
楽勝だ。
その後、わざと気配を見せたりして、ロッジとは逆の方向――火山の方へ誘い込んだんだが、それでも油断は出来ない。
オレを見失ったアイツがこっちに戻ってきて、追跡されたら厄介だからな。
だから、大きく迂回しながらロッジへ戻ることにした。
ゆっくりと、慎重に、足音を立てずに歩く。
そんな歩き方で、禁止エリアになっている場所ギリギリまで動いて、大きく遠回りしたんだ。
時間はかかった。
で、ようやくロッジの前まで戻った時は、深夜の放送の直後。
モツゴロウの声を聞いて、クソッタレって思ったよ。
潰されてる数は止まってない。
ペースは落ちていないんだ。
この潰し合いゲームは順調に進行中で、モツゴロウの目論見通りに進んでる。
いったい、誰が、何匹が、ゲームに乗っているのか。
信頼できる奴は誰なのか。
スナネコ……大丈夫だろうか。
頭の中がぐちゃぐちゃになってる。
でも、かばんと助手がなんとかしてくれるって言うなら、オレはあいつらに協力したい。
しかし、放送で呼ばれたのはへいげんちほーにいた奴らばかりだったな。
仲間割れでもしたんだろうか。
いや、それよりも問題がある。
ジャパリまんを屋根のある場所に置いているとかモツゴロウは言っていた。
ロッジって名称も呼ばれてたな。
かばんと助手がまだ待っていてくれる保証はないけれど、もし、まだオレを待っているのだとしたら、腹を空かせてロッジに来た奴と鉢合わせになってる。
それはもちろん、ロッジに着いたオレだってそうなる可能性はあるけれども。
……争いになりかねないし、避けたいところではある。
だが、幸運にも、オレにはピット器官があるのだ。
「もし、ロッジの中に、2人組がいなかったら」
このままロッジに入るわけには行かない。
オレはピット器官で、ロッジの中を見た。
……いた。
確かに、2人組だった。
「な、なんだよあいつら、やっぱりオレのこと待ってたのかよ」
嬉しいわけじゃない。
でも、しっぽが自然と動いてしまうような気分だ。
オレは、遠慮なくロッジの入口に近付いた。
……
だが、おかしかった。
ピット器官で見る限り、オレの足音――下駄の音に気づいたらしい2人組は、驚いたようにして、建物の奥に逃げ込もうとしている。
どうしたんだ?
オレだって、気づいてないのか?
オレは、建物の周囲を回って、2人組が逃げた先、ロッジの裏口へと向かった。
だが……
「何で、逃げるんだよ」
絶対におかしい。
まさか、この2匹、助手とかばんじゃないのか?
「お、おい! 逃げるな! 誰だ、お前達は!」
言ってからしまったと思った。
ちょっと大きな声だったと思う。
だけど、ロッジの中にいた2人組、その片方が言ったんだ。
「じぇ、ジェーンです! ジェンツーペンギン(30番ペンギン目ペンギン科アデリーペンギン属ジェンツーペンギン)の、
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