一日目、昼(昼下がり)

第13話 第一回定時放送

 ピンポンパンポーン


『はいはーい! モツゴロウでーす!

 みんな、元気に潰し合いしてますねぇ! よーしよしよし! えらいですねぇ! っと、さて、全員が出発した後の第一回放送と言うことで、少し遅れてしまいましたが、一日目、お昼の放送になりまーす!


 まずは、退場したフレンズを順番に読み上げますよー!


 44番 フェネック

 02番 アフリカオオコノハズク

 28番 サバンナシマウマ

 01番 アクシスジカ

 13番 オオアルマジロ

 17番 オセロット

 45番 フォッサ


 この短時間に7匹ですよ! 7匹! 良いペースですよぉ!

 いやいや、これは予想外です!

 まさかこんな簡単に皆さんが潰し合いをはじめてくれるとは思ってもみませんでした!


 ではでは残り47匹、この調子で最後の一匹になるまで潰し合ってくだい!

 フレンズの皆さん! 

 勝ち残って、価値のあるけものになりましょう!


 と、それでは次に、禁止エリアの発表です。


 本日の日没になります。近い時間の発表ですので、注意して聞いてください!

 良いですか?


『ひのでこう』から見て、陸伝いに南東へ向かった先にある、半島です!

 飛べるフレンズさんなら分かると思いますが、半島とは、海に対して尖った形になっている陸地のことです。

 ロッジから見ると、ずっと南に下ったほうになります!


 ……なんて、説明はしてみましたが、フレンズさん達に方角は分かりますか?

 分かるフレンズは少ないですよね。


 まぁ、でも、とりあえずはその半島が禁止エリアになりますので、もし、空を飛べるフレンズや、泳げるフレンズがそこに行ってたりしたら、急いで他の場所に移動した方がいいですよー!

 腕時計が作動しますからね!


 えー、続きまして、二箇所目の禁止エリアです! 本日の深夜になります。へいげんちほーの西側です!

 まぁ、こっちは時間的に見てもたどり着けるフレンズは少ないとは思いますが、十分注意してください!


 それから明日の日の出、朝日が昇るころ『ひのでこう』及びロッジの南が禁止エリアになります。

 みなさんが巨大なセルリアンと戦ったあたりですねぇ。あの辺りからセルリアンを沈めた海までは全て禁止エリアになりますので、注意してくださいね!


 では、次回放送は本日の日没後、最初の禁止エリアが施行されてからになります。

 ちなみに明日のお昼の放送は今回よりも早い、太陽が真上に来たくらいにやりますので、覚えておいてね!

 それでは皆さん、風船が潰れていなかったら、またお会いしましょう!』


――――――――――


 モツゴロウは放送のスイッチを切ると、近くにいた黒いボスに言った。


「……さて、セルリアンの動向はどうでしょうか?」

「現在、発見シタ『セルリアン』ノ駆除ハ、完了シテルヨ。新シイ個体モ、今ノトコロ、出現シテナイヨ」

「そうですか。それは結構です。ゲームを乱されるのは面白くないですからね。しっかり監視していてくださいねぇ……しかし、イライラしますよ! まったく!」


 モツゴロウは一転して怒りの形相を浮かべると、怒鳴った。

 近くのテーブルに乱雑に置かれていた名簿をわしづかみ、地面に叩きつけると、その紙を踏みつける。


「誰ですか、この名簿を作ったのは! ふざけやがって! 30番が『ジェンツーペンギン』じゃなくて『ジャンツーペンギン』になってるじゃないですか! 50音順ならジャガーよりも先に出発しなければならなかったのに、普通に読んでしまったおかげで出発の順番も狂いました! 許せませんよ!」


 しかし、モツゴロウはすぐに冷静になると、椅子に座り、鼻でフンと笑った。


「まぁ、サバンナシマウマの後にジャガーが出発したことで、良い展開になりましたからね。とりあえずは良いでしょう。でも、後で色んなところから突っ込まれるでしょうね。うーん、いや、そうか!」


 モツゴロウは膝を叩く。


「全て下請けの責任にしましょう! ……うん! それが良いですねぇ! で、その下請けの代表が全部悪かったことにして、圧力をかけて口封じです。そいつに責任をおっかぶってもらえば何も問題は無いですねぇ! 私はなーんにも悪くない!」


 モツゴロウは目を細めて笑った。

 実に良い考えだ。


「問題は解決ですねぇ!」


 モツゴロウは椅子に座りなおすと、風船が潰れた時間と動物の名前、そして場所を、紙に書き連ねる。

 そして、改めて、これは良いぞと思った。

 このゲームには悲しみがあり、恐怖があり、怒りがあり、疑惑があり、正義がある。

 これは聴衆を沸かせるドラマになるぞと。

 うん。実に私好みの良い展開だと。


「いやぁ、しかし嬉しいですねぇ。何よりも、戦闘力が高いキングコブラがゲームに乗ってくれたのは喜ばしい! もっとゲームに乗ってくれる動物がいると、ずっと面白くなると思うのですが……まぁ、でも、始まったばかりですからねぇ。とりあえずゲームを見守りましょうか」


(残り47匹)

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