一日目、深夜

第39話 第三回定時放送

 ピンポンパンポーン


『はいはーい! っと、モツゴロウでーす!

 皆さん、元気に潰し合いしてますかー!

 深夜になりましたので、予定通り、第三回定時放送を始めまーす!


 ではさっそく、退場したフレンズを読み上げますので、ちゃんと聞いててくださいねぇ!

 例によって、風船が潰れた順でーす!


 32番 シロサイ

 07番 アラビアオリックス

 14番 オーロックス

 40番 ハシビロコウ

 51番 ライオン


 いやぁ! 素晴らしい!

 相も変らぬ良いペースで、次々と潰されて行ってますねえ!

 残り35匹です!

 変わらないペースで、これからも頑張ってくださいよぉ!


 とととと、次は禁止エリアの発表です!

 まず、第二回の放送で伝えていた通り、この放送でへいげんちほーの西側が禁止エリアになりまーす!


 へいげんちほーにいるフレンズさんたちは、十分注意してくださいね!


 と、次は前回までの発表のおさらいです!

 夜が明けるころ。禁止エリアは『ひのでこう』周辺と、ゆうえんちの周辺になります!

 まだ遊園地の近くにいるフレンズは、今のうちに離れた方が良いですよー!


 続きましてお昼。

 お昼はロッジ周辺になりまーす!

 すでに禁止エリアになっている『はんとう』からロッジの北側まで、まるっと禁止エリアになります!


 まだ時間はありますが、皆さん、余裕をもって移動してくださいね!


 次に、新しい禁止エリアの発表です!

 明日の夕方!

 明日の夕方は、さばんなちほーの南西部になります!

 さばんなちほーにいる方は、十分注意してくださいね!


 はい! 禁止エリアについては以上です!


 さてさて、それでは最後に、頑張ってる皆さんへの嬉しいお知らせがありまーす!


 ご褒美です!


 朝から丸1日、そろそろお腹が空いているでしょう!

 そこで、ラッキービーストに、色んな所にジャパリまんを持って行ってもらってます!


 実は、お昼の時点で各地に動いてもらってますので、すでに出会えた方もいらっしゃると思いますが、会えた方はとっても運が良いですねぇ!


 ジャパリまんがあある場所は、屋根がある建物です!

 屋根って分かりますか?

 分かりやすく言うと、ロッジや温泉、図書館、へいげんちほーにある城、アメリカビーバーちゃんが作った『いえ』なんかもそうですね!

 四角くて、壁があって、空が塞がれてて、雨が降った時に濡れない場所になります。


 先ほど上げた場所以外にも、屋根がある場所にはラッキービーストを向かわせましたので、お腹が空いた方は探してみてはどうでしょうか?


 まぁ、数は限られてますので、早く取りに行った方が良いですよ?

 遅いと、なくなっちゃうかもしれませんからねぇ。


 さてさて、そんなわけで、繰り返しますが残り35匹です。

 夜行性の方は、まだまだ朝まで時間がありますので、これからも頑張ってくださいねぇ!


 では、次の放送、朝の太陽が出てくる頃の、第4回放送でお会いしましょう!』


――――――――――


 モツゴロウはマイクのスイッチを切った。


「ふー、全く忙しい忙しい」


 禁止エリアの予定が書かれた紙を持ち出すと、その時間と場所を確認し、それから各地で繰り広げられているフレンズ達の会話の内容を一つ一つ読み、ドラマティックに見える物を拾い上げてはチェックを付けていく。


 斜線が引かれているのは、彼女こと、モツゴロウが『くだらない』『つまらない』『意味の無い』と判断した物だ。

 丸印が付いているのは、逆に彼女にとって『価値がある』とされた会話である。


 モツゴロウは、それらの中でも、先程書き出した会話の全文が書かれた紙を持ち上げて、ニタニタと笑った。


「いやぁ、しかし、ライオンちゃんは良い仕事をしてくれましたねぇ! 良いですよ、これ! 必死にライバルの元へたどり着いて、後を託す……! 感動しました! さて、ヘラジカの様子はどうですか?」

「ヘラジカハ、マダ、泣イテイルヨ」

「え? まだ泣いてるって?」


 チャンネルを合わせると、大きな声で泣き叫んでいるヘラジカの声がその場に響き渡った。

 それは、まるで言葉になっていない、悲しみと怒りが入り交じった、感情の叫びだった。


 モツゴロウは、それらの声をかき消すかのようにして笑う。


「アハハハハハハハ! 良いですよー! そりゃこうなりますよねぇ! 誰かに潰されたライオンに――大切な友達に『仲間を助けて』って言われた直後に、他の仲間がほとんど全員、とっくに風船が潰されてるって教えてやったんですから! この展開は偶然ですけど、ほんと良いように動いてくれましたよぉ!」


 それからモツゴロウは顔を紅潮させながら、体を震わせて恍惚の表情を浮かべた。


「いやぁ、たまらないですよぉ……! 潰し合いゲームの状況で正気を失わない、精神的に強い奴が心を打ち砕かれて泣いてるのは……! 私が求めているのはこれですよ! こう言うドラマが良いんです! 見てて楽しいですし! さぁて、ヘラジカちゃんは、これからどうするのかなぁ? ライオンの言葉を忘れて、犯人捜しに走ってくれると都合が良いのですけどねぇ!」


 モツゴロウは大きくふんぞり返った。


「そう言えば、近くに、まだ反抗的にしてるグループがいますねぇ。セルアンハンターですか? ヘラジカが戦闘力が高い彼らと合流する可能性もありますけど、まぁ、それでも良いです。いくらこっちに敵意をむき出しにしたって、何も出来るわけありませんしねぇ。最終的に潰し合うしか無いんですから。まぁ、追い詰められて、切羽詰まってから、せいぜい派手に潰し合ってくださいよ」


(残り35匹)

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