一日目、日没

第28話 第二回定時放送

 ピンポンパンポーン


『はーいよっと、モツゴロウでーっす!

 陽が落ちましたので、第二回定時放送を始めます!


 まずは新たに退場したフレンズの発表でーす!

 風船が潰された順番に読み上げますから、よーく聞いておいてくださいよぉ!


 12番 エリマキトカゲ

 29番 ニホンツキノワグマ

 03番 アフリカタテガミヤマアラシ

 24番 クジャク

 09番 アルパカ・スリ

 31番 ショウジョウトキ

 37番 トキ


 いやぁ! すごいですねぇ! えらいですよぉ!

 私、感動しました! この短時間に、さらに7匹!

 お昼から数えて14匹です!

 皆さんがやる気になってくれて、ほんとに嬉しいなぁ!


 しかし、トキちゃん。

 歌で呼びかけて他のフレンズを集めるってのは良い考えだったのに、集まったフレンズが全滅って言うのは残念でしたねぇ!

 でも、覚えていてください!

 どんなに仲間を集めても、このゲームの優勝者は、たったの一匹です!


 最終的に、みなさんは潰し合うしかありませーん!


 と、言うわけで残り40匹です!

 夜になりましたが、夜行性の動物もいますので、ますます目が離せませんねぇ!

 皆さんも夜だからと気を抜かずに、十分注意して潰し合いをしてくださいね!


 では、次に、禁止エリアの発表です!

 それから、お昼のおさらいも少ししますので、聞き逃さないようにしてくださいよぉ!


 と、さっそくまずはおさらいです!

 この放送が始まるちょっと前、宣告通り、『はんとう』を禁止エリアにしました!


 それから深夜!

 日付けが変わるごろですねぇ!

 禁止エリアになるのはへいげんちほーの西側になります!

 そっちまで行けたフレンズさんはまだいませんよねぇ?

 でも、禁止になってから立ち入っても腕時計が作動しますから、注意してください!

 それから、明日の日の出です! 『ひのでこう』付近が禁止エリアになります!

 火山の南。ついこの間、皆さんが巨大セルリアンと戦ったあたりはまるっと禁止エリアになりますので、注意してくださいよぉ!


 さて、次に、新しいエリアの発表です!

 明日のお昼に、ロッジ周辺が禁止エリアになります!

 ロッジなんかは隠れやすい場所ですから、たくさんのフレンズさんがいる、もしくは向かっていると思われますが、それも明日の昼までなので注意してくださいねぇ!


 以上です!

 次の放送は深夜、へいげんちほーの西側が禁止エリアになる時間に放送となります!


 あ、ちなみに補足ですけどねぇ!

 間違って禁止エリアに入り込んでしまった場合、まず腕時計が鳴りますから、作動する前に急いで戻ってくださいねぇ!

 これは地理に詳しくない動物のための措置です!

 一定時間内に戻らなかった場合、腕時計が作動します!

 良いですか? 腕時計が鳴り始めたら、禁止エリアに足を踏み入れたと言うことですから、急いで腕時計が鳴る前の場所に戻ってくださいねぇ!


 まぁ、禁止エリアが施行された時に禁止エリアの真ん中とかにいるとかだと、まず助かりませんけどね!


 ではでは皆さん!

 夜になったということで、大変暗いです!

 注意して潰し合いをしてくださいね!

 それではまた、深夜にお会いしましょう!』


――――――――――


 モツゴロウはマイクのスイッチを切った。

 そして、肩を震わせて、机に突っ伏した。


「く……く……」


 いったいどうしたのかと、付近の黒い巨大ボス達は一斉に注目した。

 だが、モツゴロウはあろうことか笑い出したのだ。


「くあっはっはっはっはっは! もう、我慢できません! バカ! 本当にバカですねぇ! 本当に浅はか! 仲間を探してる、だなんて、へったくそに歌って、その結果があれですよぉ! 手を繋いで、バカみたいなあの歌だけでも笑えるのに、その結果、全滅って! 動物程度のちっちゃな脳みそが考えることなんて、しょせんあの程度なんですねぇ! あはははははははははは!」


 モツゴロウはお腹を抱えて、椅子を転がしながら地面に倒れこむと、暴れまわった。


「く、苦しい、助けて! いーっひっひっひっひ! あ、アルパカも、お友達だよぉだなんて、近づいて、風船を潰されてるんですから、本当にバカですよぉ! あはははははははは!」


 ようやく落ち着いたのは、しばらく経ってからだった。

 モツゴロウは冷静な顔でスクッと立ち上がると、それから笑いすぎて飛んで行った眼鏡を拾い、なおもこみあげてくる笑いをこらえた。


 良い。実にいいドラマだ。

 あからさまなお涙頂戴のドラマしか生まれないと思いきや、演出次第ではコメディとしても使えると、モツゴロウはニヤニヤとしたいやらしい笑みを浮かべた。

 うん。そうだ。それが良い。

 BGMと効果音を使い、面白おかしくこのドラマを飾り立てよう。


「……しかし、助手が考えついた作戦と言うのが気になりますねぇ。あの憎らしい『かばん』がいないと出来ない作戦ですか? まぁ、私たちに逆らえる手段なんて、そうそうありませんけどねぇ」


 モツゴロウは嘲りながら、名簿につけたチェックを眺める。

 脱落したフレンズの番号と名前である。

 そこには、腕時計が作動した時間も併せて書いてあった。


「まぁ、せいぜい頑張ってドラマを盛り上げてください。もちろん、何やっても、どうせ無駄ですけどねぇ」


(残り40匹)

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