トキ(37番 ペリカン目トキ科トキ属)

第25話 ひとりぼっちはつらいもの

 私はトキ(37番 ペリカン目トキ科トキ属)、仲間を探してるの。


 ゲームが始まって、ゆうえんちを出て、そして入り口で倒れている二匹のフレンズを見たわ。

 風船が潰されていて、とっても怖かった。

 だって、誰かがゲームに乗ったってことだもの。

 だから、急いで飛んで逃げたのだけど、でも、どこにも行けなくて、隠れていることしかできなかった。


 飛んでいるばかりじゃ目立って危険だったし、それでも怖くてジッとしてたのだけど、それでも独りぼっちはいやで、私はびくびくしながら、ちょっとづつ歩いていたの。

 そしたら、私を見つけてくれたフレンズがいた。


「ふわぁぁぁぁ。会えで良かったよぉ……」


 アルパカ(09番 クジラ偶蹄目ラクダ科ビクーニャ属アルパカ・スリ)だったわ。

 彼女は、目に涙をいっぱい貯めて、私に抱き着いてきたの。


「アルパカ。会えて良かったわ」

「わだしもだよぉ」


 アルパカは、怖かったんだと思う。

 だって、体がぷるぷる震えてたもの。


「今までどうしてたの?」

「あのね。ゲームが始まって、外に出たんだけど、誰も外で待っててくれなかったから、怖くなっちゃって、走って逃げたの。そのあと、隠れてて、でも、独りぼっちは嫌だったから」

「だから歩いてたのね。私もよ、アルパカ」


 会えて、本当によかった。

 だって、彼女も私も、叩いたり蹴ったりは苦手だし、やらなくちゃいけないとしても、風船の潰し合いだなんて出来そうにないもの。


 それで、二人で情報を交換したわ。

 入り口で二匹のフレンズが風船を潰されていたことを教えて、アルパカからは、腕時計が作動したパンッって音がどこかで鳴ったと、教えてもらったの。


「潰し合い、始まったしまったのね」

「悲しいなぁ。でもね、私ね、みんな怖いだけだと思うんだぁ」

「そうね」


 アルパカが言うのは、すごく納得できたわ。

 だって、私だって怖くて怖くて、もし誰かにあった時に、その子が信用できるかどうか考えてしまうし、向こうもそうだと思う。

 それで、向こうが私を信用してくれなかったら、きっと風船を潰される前に潰さないと、とか、そういう事を考えてしまうんじゃないかしら。


「あのね、私、思うんだぁ。このゲーム、誰かを信用できなくなったら、お終いなんじゃないかなぁって」

「うん。それもそう思うわ。だって、誰かの風船をもし、潰しちゃったら、その後、誰かに信じてもらうことがすごく難しいと思うもの」


 そこまで話して、モツゴロウの放送が流れたの。

 放送を聞いて、私もアルパカも、とても驚いたわ。


「もう、7匹も?」


 悲しくて、恐ろしくて、私たち、二匹で抱き合って震えたわ。

 アルパカのモフモフ、とってもあったかい。

 それで少し落ち着けて、それから二匹で相談して、決めたの。


 仲間を増やそうって。

 きっと、ゲームに乗らないで、仲間を探してるフレンズがたくさんいるから。


「でも、どうやって?」

「難しいよね。でも、トキは大きな声で歌えるから、うたを歌ってみればいいんじゃないかなぁって思うんだ。それでね、ここにいるよって、場所を教えるの! ここに来て、集まって、仲間になってーって」


 歌を?


「でも、そんなことしたら、危険じゃないかしら」

「うーん、そうだよねぇ。ゲームに乗ったフレンズにも、私たちの場所を教えることになるもんね」

「……でも」


 私は考えた。

 考えて、でも、やるなら今しかないって思ったの。

 だって、まだゲームは始まったばかりで、みんな動揺している。

 時間が経てば経つほど、風船を潰されるフレンズの数は増えると思うし、そしたら、誰かを信用できなくなるフレンズの数もたくさんになってしまう気がするの。

 夜、暗いところで独りぼっちでいたら、多分、ずっとそう言う子が増えてしまう。


 だから、ゲームに乗ると決めてしまうフレンズが少ない、今のうちに。

 日が沈んでしまう前に。


「アルパカ、私、歌うわ」

「良いの?」

「だって、アルパカも言ってたじゃない? 誰かを信用できなくなったら、終わりだって。だったら、私たち、みんなを信じなきゃ。もし独りぼっちで怖くてゲームに乗っちゃっただけなら、私たちが仲間になってあげるって教えてあげれば良いと思うの。そしたら、私たちの仲間になってくれるかもしれないから」


 アルパカは目を輝かせて、私の手をにぎにぎ。


「それ、とっても良い考えだと思うなぁ!」

「ありがとう。それじゃあ、みんながわかるような場所まで行きましょう」


 そうして、私たちは高台を見つけたの。

 ここならステージみたいだし、PPPぺパプみたいに歌えるかもしれない。

 そこで私は、歌うために深呼吸をしたわ。

 少し、緊張するものね、やっぱり。


「お茶、淹れられなぐて、ごめんねぇ」

「大丈夫。あなたが近くにいてくれるから、私、きっと、ずっと上手く歌えるわ」


 私は力いっぱい歌ったわ。

 仲間を探している。

 潰し合いなんて、そんなことしないでここに来て。

 ゲームになんて乗らないで、手を取り合って、モツゴロウと戦いましょう。


 みんな、ここに来て……!

 お願いよ。お願いだから。


 パーク中のフレンズに聞こえるように、一所懸命に歌ったの。


 そしたら、遠くに私の友達が見えた気がして、私は嬉しくなって、さらに歌を歌い続けたわ。

 それで、その友達は、私たちの目の前まで来て、そして……

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