概要
短縮労働は、少子高齢化の時代に導入された新しい雇用形態だ。
クローンと労働を分割し、定年までの時間を短縮。
契約期間を終えれば、国から高額な年金も支給される。
その年金を持ち帰り、故郷の婚約者と結婚をするのが、彼の夢。
……そのはずだった。
ある事実に気づくまでは。
紀元三〇〇年七月七日。
長い長い一日が、大音量のアラームとともに動き出す。
第四回ハヤカワSFコンテスト一次選考通過作改稿。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!待っているはずの明日はどこかで見た昨日
毎日毎日同じような仕事でうんざりという人が共感間違いなしなのがこの作品。
主人公は、自分のクローン四人と人形工場で働く「ぼく」。ベルトコンベアに載って流れてくる不気味な肉塊を処理しながら、ぼんやりと過去に思いを馳せ、あるいは契約終了後の輝かしい未来を夢想して、淡々と労働の日々を送り続ける。契約期間は本来四十年だが四人のクローンと一緒に働いているので期間は1/5の八年。その内の半分も過ぎて、自由になれる日も決して遠くはない。
……だが、あるとき「ぼく」は日常の中にある綻びを見つけてしまい、そして自分が遺したと思しき奇妙なメモを発見する。
「われわれの記憶は偽物だ。」
設定はSFだが、不気味…続きを読む - ★★★ Excellent!!!増殖するかのようなその一日、異変もまた増殖するかのように
単調な工場労働、契約期間は40年。
とはいえ、自分の複體《クローン》4人との分担になるから、
5で割って8年間の拘束というわけだ。
紀元300年7月7日星期四の「きょう」でちょうど折り返し地点。
ところで、昨日は何年何月何日の星期几だった?
そっくり同じように見えて、わずかに違う複體たち。
まったく違うように見えて、同じ仕組みの役割分担。
輸送帯《コンベア》に載せて運ばれるように読み進めれば、
次第に明かされていく工場の、記憶の、世界の、記述のカラクリ。
『われわれの記憶は偽物だ。日誌を見ろ』
殖えていく。
繰り返される。
継続する。
壊れていく。
読み進める手応えはガッツリあるの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!平凡な1日、また平凡な1日、そしてまた…
毎日クローンたちと顔を合わせ、工場で働き続け、僅かな精神の動揺も許されない単調な日々を過ごす主人公。働き続ければいつかこの時間から抜け出し、憧れのあの人と共に過ごせる……その淡い希望は、ある日世界の真実の一端を知った時、大きく揺らぎ始め……。
……そしてここから先、主人公が読者と共に目の当たりにする事になるのは、この『世界』を覆い尽くす予想だにしない事実。複雑に入り組んだ物語を理解しようとすればするほど、全てを認識していたはずの現実を疑いたくなってしまうほど、途轍もなく壮大な仕掛けが隠されています。
延々と続く「ぼく」の連鎖の果てに、何が待っているのか……良い意味で「奇書」と呼んでも過言…続きを読む