語りし者はさいわいなり

作者 島野とって

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★★★ Excellent!!!

この作品は「言葉」を題材としているんですが……それにふさわしい文章力。風景描写が美しく、感情表現は繊細で、戦闘場面は迫力満点。

小説という「言葉で作られた作品」で、あえて「言葉」をテーマにする。これはものすごく難しいはず。そこに対する挑戦心がすばらしいし、それを見事に完成させている実力に脱帽。

作中に出てくる論理展開も丁寧で、言葉と論理に対する作者さまの真摯な姿勢が伝わってきます。

そして伏線とストーリー構成がめちゃめちゃ上手く、終盤の盛り上がりがすごい。物語が加速していく。

小説だからこその作品、圧倒されるSFです。

★★★ Excellent!!!

『言葉』の存在意義を突き詰めた作品です。
言葉を軸に複数の怪しげな集団が暗躍するのですが、其々に未来を思って動いており、単なる勧善懲悪物でない点が大人向けです。
それでいて、もう一つのキーワードである『ゴーレム』の配置が読み易くしています。ゴーレムがファンタジー物としての世界観構築に貢献しており、正確じゃないけど、喩えるならば、『鋼の錬金術士』に近い。
登場人物達もシッカリ宿命なり立場を背負っており、キャラ設定に手抜きが有りません。
白里りこさんがレビューで"哲学"の単語を使ってますが、私も哲学の趣きを感じました。本作品が近づき難いと言う意味じゃないですよ。深遠な雰囲気を漂わせた良い作品です。

★★★ Excellent!!!

物語の中心となるのは、土から生まれ人間の代わりに様々な仕事を行うゴーレムたち。
ゴーレムと聞くとファンタジーのように感じられますが、本作はれっきとしたSF作品。
伝承で語られる設定を上手く取り入れ、そこから本作独自の要素を加えて、この作品ならではのオリジナルのゴーレムを作り出しています。

人間の命令を理解して行動することのできるゴーレムたち。
言葉が通じるということは、彼らに心はあるのか? そもそも心とは何か? 
そんな話を「中国人の部屋」などの思考実験を引用しつつ展開していきます。

とはいっても、そこまで小難しい話ばかりではなく、ストーリーはしっかりエンターテイメント。

ある日、暴走したゴーレムに襲われた13歳の少女・ナーナ。そこに現れたのは、死んだ兄と同じ顔をした一体のゴーレム。
しかもこのゴーレムは普通のゴーレムと違い言葉を発することができる。

果たしてこのゴーレムは何者なのか? そしてなぜナーナは襲われたのか?

ゴーレム同士の戦いなどの、アクション要素も散りばめながら物語は進んでいき、徐々に真相が明かされていくストーリーは読んでいてたまりません!

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)

★★★ Excellent!!!

壮大で重厚な物語ですが、十三歳の少女の瞳を通して語られているため読みやすく、すぐにこの世界の虜となりました。

一話ごとの余韻が凄まじいです。
琴線にふれる言葉もふんだんに詰まっていて、ページをめくるたび、心が満たされていくのを感じました。
短い一言でサラリと確信を突いたり、同じ言葉がまったく違う味わいを持って再登場したり、たった一文で物語の手触りをガラリと変えたりと、鮮やかな筆致に終始魅了されました。
張りめぐらされた謎が解き明かされていく終盤はただただ圧倒されるばかりで、鳥肌と涙が止まりませんでした。

登場する人物たちもすごく魅力的で、私はマリウスさんに強く心を奪われました。彼の生き様も、彼が語る言葉も、ひとつたりとも忘れたくないほど大好きです。


SF初心者故レビューを書く勇気がなかったのですが、最後まで読み終えた今、この感動をちゃんと自分の言葉で伝えたいし、届いて欲しいと思い直しました。
自分の言葉で伝えること、相手の言葉を感じること、言葉の可能性を信じること、すべてを諦めずに大切にするべきだと、この物語が教えてくれました。

この超大作を書き上げた作者様は一体何者なんでしょう。言葉の伝道師とお呼びしてもいいですか……!!

★★★ Excellent!!!

少女ヘレナの前に現れた『ゴーレム』は、死んだ兄そのものの形をしている――。
チェコの首都プラハから始まるそんな物語は、どこかファンタジーな光景が脳裏に浮かびます。

私達の操る『言葉』とは?
そして『人』が造り上げた『ゴーレム』が『言葉』を発さない意味とは?

ヘレナが持つ疑問と謎を追いながら、物語に惹き込まれていきました。

気付けば、最終話まで一気読みしていました。

全ての設定に意味があり、読んでいてふと浮かぶ違和感も、後々きちんと説明されます。
丁寧に敷きつめられた伏線が回収される心地よさは、是非味わってほしいです。


あとお風呂シーンもあります

★★★ Excellent!!!

世界観を巡るこの奥深いSF物語は、言葉と宗教を巡る哲学でもある。
伝えるということ。言葉というもの。その真実の姿に次第に迫ろうとする展開が本当に魅力的で、読み終わるのが勿体無かったくらい。
チェコが舞台という辺りがとてもよくはまっていると思いました。歴史ネタを挟んで下さるのが尚更。

★★★ Excellent!!!

どうにかなってしまったらしい世界。人類は、物言わぬ泥の働き手・ゴーレムたちに支えられ細々と生きながらえていた。チェコに暮らす少女ヘレナは、最愛の兄と死別し、鬱々と暮らしていた。しかし、そんな日々は、襲撃者たちにより一変する。

救いに現れた兄とそっくりなゴーレム、失踪した父親、原因不明のゴーレムたちの暴走、謎が謎を呼ぶスリリングなストーリー。そして、ゴーレムの製造を担う結社『その三文字』の抱えた秘密。言葉とは、人間とは、世界とは何か、語り尽くせぬ深遠なテーマ。たくさんの謎と秘密が目まぐるしく展開され、終盤で全てが解き明かされる。

非常に読み易く整理された、でも鳥肌の立つような熱狂のある、素晴らしい構成でした。

ヘレナはゴーレム・ヨゼフに複雑な思いを抱く。自分を守ってくれる、優しい、何より死んだ兄の似姿で、しかし人ではない泥人形。言葉を、心を通わすことなどできるのか、彼女は悩み苦しむ。また、冷たい父親レーヴとの確執も棘となって苛む。『その三文字』の重鎮であり、自分を相手にせず放って、どこかに行ってしまった。自分が追われる理由も父に何か関係があるらしい。彼女のゴーレムと言葉にまつわる冒険は、兄への想いと、父親の真意を追う旅でもあります。

そういえば、チェコが舞台でゴーレムがどうと言われると、カレル・チャペックを連想される方がいるのではないでしょうか。ロボットという語の初出である彼の戯曲では、ロボットとは労働者として作られた人造人間のことです。待遇に耐えかねてなんと反乱を起こし、人類を滅ぼしてしまいます。しかし最後にはとある二人のロボットが愛を獲得したところで幕が引かれました。
傷ついた少女の行き着く果てには、愛はあるのだろうか?

是非とも読んで確かめて欲しい、SFとしてもドラマとしても面白い贅沢な一品です!

★★★ Excellent!!!

5-4まで拝読させていただきました。正直SFは難解なイメージがあり、苦手意識があったのですが、このご作品はSF初心者でも入りやすい設定で世界観だと思います。ゴーレムという人型の存在なくては人類が生きられない世界。そこで少女は今は亡き兄とそっくりなゴーレムと相対し、普通のゴーレムではありえない挙動に一喜一憂します。少女がゴーレムの成り立ちについて深くを知ったとき、こちらは思わず感動を覚えてしまいました。……私達の世界でのロボットも、遥か未来でこんな風に躍動するのでしょうか。実に感慨深いご作品でした。SFが苦手な方もぜひご覧になってみてください。

★★★ Excellent!!!

最初は中世を舞台にしたモダンファンタジーかスチームパンクかなといったところですが、読み進めていくとかなり深く踏み込んだ哲学書のような印象に変わっていきます。
筆者の言葉と人間の存在に関する深い洞察がゴーレムというモチーフを通してイメージしやすく描かれており、難しい哲学的な内容もすっと入ってきます。
所々場面を想像するのに苦労するところもありますが、時間をかけて読んだ分、読み手に残る物も大きい作品なのでぜひ多くの方に読んで貰いたいです。

★★★ Excellent!!!

ゴーレムと出会った少女の話です。

前回アニメカ! を読ませて貰ったのですが、今回の話もよかったです!

前日に伊藤計劃の虐殺器官を見たせいか、言語の意味とは何だろう、という思いが膨らみこちらの話とシンクロして読ませて頂きました。

最終章で全ての謎が解けます。

SFでありながら、ミステリー、最後はヒューマンドラマに入るゴーレムの謎。

期待外れになることはありません。

次の物語にも期待して、星3つ送らせて頂きます!

★★★ Excellent!!!

「薔薇の名前」を少し想起させる、マニエリスティックな世界観があります。構築された世界観が渋く、舞台がチェコで設定もファンタジック。そのためSFとしては珍しく、しっとりした手触りの作品です。

とはいえ短文中心の表現を本作では採用しているため、読みづらさは皆無です。

亡き兄をゴーレムに投影する主人公は哀れですが、土塊に過ぎないゴーレムが徐々にその限界を超えていく描写が続き、次第に物語に引き込まれます。

暴走するゴーレムに禁忌を破るゴーレム――。ゴーレムを巡る思索的な謎が徐々に深まっていきますが、最後「第九話」の数エピソードで、すべての謎と鍵がほぐれるように語られるのは、ミステリ的で快感でした。

★★★ Excellent!!!

現在、7 - 2 『完全言語』まで読ませていただきました。
人類が絶滅に貧した世界。その中でどうにか社会を成り立たせるために造られたゴーレム。人によって造られたゴーレムだが、そこに至るまでの経緯と理論は目を瞠るものがありました。
そして読み進めていく内に明らかになる真実、そして作者がテーマに据えた物語の根幹が見えてきた時、思わずニヤリと頷いてしまいます。
読みやすい読者に配慮した文章もいいですが、何より世界観構成が頭一つ飛び抜けています。

続きもまた楽しみに読ませていただきます。

★★★ Excellent!!!

神の文字が刻まれた泥人形ゴーレム。
現代人はおそらくコンピュータにプログラムを書き込むような感覚で理解できるでしょう。
ファンタジーの雰囲気を保ちつつも「SF」と銘打つだけあって
様々に科学的な裏付けがなされていて、贅沢です。
どんどん広がっていく世界に引き込まれました。

★★★ Excellent!!!

素晴らしい大作です。ゴーレムが出てくるということでファンタジー的なものを想像するかもしれませんが、すさまじいスケールのSF作品です。終盤からラストにかけて次々と明かされる真実には鳥肌が立ちました。読んでいるうちに脳がすごい活性化して目が覚めるような感覚でした。言葉とは、ゴーレムとは、人とは、世界とは――その真実をぜひ最後まで読んで知ってほしいと思います。圧倒されます。

★★★ Excellent!!!

中世の景観を留め、モルダウの流れを望むチェコの首都プラハ。
『破局』により激減した人口と、その労働力を補うゴーレム。
ファンタジックな舞台設定がどこか詩的な文体で語られるが、
読み始めてすぐに「そうだった」と思い出した。

そうだった。
この作品はSFだ。

作中のゴーレムとは、身体性を持つ人工知能であり、
『言葉』による入力を受けて命令を理解・実行し、
身体を動かして労働するという出力を為す。
一定の自律性を有し、人を模した動作を課されている。

物語の冒頭で、ゴーレムの暴走の様子が語られる。
人の使う言葉は定量性に欠け、ゴーレムの頭脳に負荷を掛ける。
命令であるその言葉が規定すべきフレームがあまりに曖昧で
解釈に矛盾が生ずれば「フレーム問題」がゴーレムを暴走させる。

アイザック・アシモフのロボットSFを、私は真っ先に想起した。
ロボット三原則という本能に忠実なロボットたちの振る舞いは、
自己犠牲を厭わぬ優しさを備えているかのように、人の目に映る。
本作のゴーレムも、ひどく忠実で純粋で、時として優しすぎる。

私の知人に「人工知能を備えたソフトロボット」の研究者がいる。
彼の専門は遺伝的アルゴリズムを用いたシミュレーションだが、
人工生命が自然界のモデルと同じように進化するケースは、
素人が予想する以上にまれであるらしい。

例えば、水中で前進する機能を持つ人工生命を造るとする。
魚かウミヘビかヤゴか、人はそういった形への進化を予測するが、
シミュレーションで最も評価が高かった個体は予測を裏切り、
ジャイロ回転しながら進む円筒状の異形の代物だった。

そういったソフトロボットの進化論の話を、
ゴーレムの体と言葉の関係性への言及を読みながら思い出した。
労働という出力を為すために、体と言葉は直結している。
体が欠損すれば、実行すべき命令は宙に浮き、暴走に繋がる。

『中… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

壮大な物語です。冒頭、少女とゴーレムの話から、ストーリーはどんどん遠大になってゆき、言葉とは、言葉がない場合に我々は存在できるのか、というような哲学的なテーマになってゆきます。

正直、ラストは、全く想像のつかない着地点でした。かなり重い、難解な小説ですが、頑張って読みとおす価値はあると思います。特に哲学や神学に興味のある方に、絶対におすすめです。

★★★ Excellent!!!

 甚大な被害をもたらした『破局』の後の世界。
 その後人類は衰退の一途をたどっていた。
 復興に思うような人材が確保できず、土くれで構成されたゴーレムが労働力になっている。
 ゴーレムはともすると暴走を起こす。家族を喪い一人で暮らすヒロインヘレナ。
 彼女の窮地を救ってくれたものとは。
 錬金術の過程で生み出されたとされるゴーレム。
 その動力源、動く理由をファンタジーではなく、数学的証明で解説していく本作。
 先生や師匠に提示される説話によって、新たな事実が展開されていくのには唸らされます。

 兄によく似たゴーレム。ヨゼフと名付けられた彼との出会いはヘレナにどんな変化をもたらすのか。

 豊富なSF知識が活かされたロジカルなSFをどうぞ。

 (ちゃんと、巨大戦もあるよ。

★★★ Excellent!!!

チェコ、プラハ。
災厄で人口は激減し、ゴーレムの労働が街を支えている。
暴走ゴーレムに襲われたヘレナを助けたのは、亡兄にそっくりなゴーレムだった。

人は語るが、ゴーレムは口をきかない。
ゴーレムには「言葉」で命令を与えるが、適切に指示しないと、人の意図しない行動を取る。
塔の囚人。ゴーレムは「言葉」に従うが、果たして意味を理解しているのか。

中身はがっつりSFですが。
心の中の思いを完璧に言葉で表現することは難しく、口にした瞬間に嘘になってしまうかもしれない。
自分の発言で誤解を与えたり、傷つけたりするかもしれない。
不完全な言葉でのコミュニケーションを恐れ、沈黙に傾く少女の気持ちは、SF関係なく、共感できます。

それでも、少しでも思いを伝えるためには、語らねばならない。
人は、言葉を持っているのだから。

★★★ Excellent!!!

この作品は、京極夏彦にとってのルー・ガルーであり、宮崎駿にとってのナウシカであり、押井守にとってのケルベロスであります。
この筆者は今後、より洗練された作品を書いていくことでしょう。
そしてきっと、筆者の多くの作品には今回の「語りし者はさいわいなり」が根幹として必ずある筈です。
それ程に、この作品には著者の興味、知識、思想が詰め込まれています。もはや表出された著者自身であると言えるでしょう。
このような”著者の内面が見える”作品に出合った時、人は心震わせるものです。
他者のフェティシズムを垣間見る事は途方もない誘惑と逸楽に満ちています。誘惑と逸楽に満たされたこの作品、是非一度最後まで読んでみる事をおススメします!

古典SFが好きな人は最後まで読むとニヤリとする仕掛けも用意されていますよ。



★★★ Excellent!!!

少女の一人称で描かれ、中欧のエキゾチックで神秘的な雰囲気と魔法の様なファンタジーなモノで外側が包まれていますが、しっかりとSFしています。奥深いメッセージ性のある本格SFです。「言葉とは…」「人間とは…」小説好きな人でこのテーマ嫌いな人いませんよね?
文章も改行と空白に頼らない、確かな文章力です。読書してるっ!って感じがします!
SFといえば世界観の展開、曝露が大きな要素ですね。「星を継ぐもの」「新世界より」「ブレードランナー」…。この作品も、とにかくネタバレ厳禁です。少しずつ明らかになる世界の秘密を楽しみながら最後まで読んでください!

★★★ Excellent!!!

本作で提示されるヴィジョンは、危険で面白いものばかりです。
スチームパンク的なプラハの街。そこで使役されるゴーレム。主人公に襲いかかるゴーレムと兄の影…。
意識・言語・宗教など、突き詰めれば「人間」を解体してしまいそうな、深くて危険なテーマを扱いつつ、エンターテイメントを忘れない姿勢が素敵です。

『砂男』『未来のイヴ』『人間機械論』このようなワードにピンと来られる方は、絶対に読まれたほうがよろしいかと……!

そしてディストピア的世界観の、ディストピアになった理由がしっかりテーマと絡んでいて上手いと思いました。
『その三文字』が明かされるとき、驚かない読者がいるでしょうか。

近況ノートによれば、本作ではファンタジー技術にガチ論理学をぶち込んだとか。
ガチ論理学、まさかここまでガチだったとは……!
著者様は「テッド・チャンや伊藤計劃のファンにぜひ」と言っておられますが、テッド・チャンや伊藤計劃を凌駕しようとする志の高さを感じました。

そして書かれたテキストの意味とは。
ぜひ、ラストまで読んでいただきたいです。