渋い筆致の謎蓄積型SF

「薔薇の名前」を少し想起させる、マニエリスティックな世界観があります。構築された世界観が渋く、舞台がチェコで設定もファンタジック。そのためSFとしては珍しく、しっとりした手触りの作品です。

とはいえ短文中心の表現を本作では採用しているため、読みづらさは皆無です。

亡き兄をゴーレムに投影する主人公は哀れですが、土塊に過ぎないゴーレムが徐々にその限界を超えていく描写が続き、次第に物語に引き込まれます。

暴走するゴーレムに禁忌を破るゴーレム――。ゴーレムを巡る思索的な謎が徐々に深まっていきますが、最後「第九話」の数エピソードで、すべての謎と鍵がほぐれるように語られるのは、ミステリ的で快感でした。

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